ツツジの美しい日本庭園も

秋田県の港町、男鹿駅周辺が大きな変化を遂げている。鉄道利用者も車で訪れる人も共に利用しやすいサービスが広がる。
2018年7月、複合施設の道の駅おがオガーレがオープンし、これに合わせてJR男鹿駅舎が移転新築。どちらもまだ新しい。男鹿市は民間と話し合いながら再開発事業を進め、21年には駅と道の駅を人が自由に往来できる男鹿駅周辺広場HUBAGO(ハブアゴー)が完成し、随時イベントも開かれている。
ホットドッグカフェとわんぱく広場、海の青を基調とした大型複合遊具を設置。訪れた日曜日、周辺に家族連れが大勢いて、おじいちゃんとおばあちゃんが見守る中、孫の遊ぶ姿があった。
「ここでしか遊べない」を基準に選ばれたキックボード、ボッチャ、竹馬、凧揚げなど遊具の貸出は無料。イージーローダーは初めての子も足を交互に動かしてすいすいと動き回っていた。親も挑戦してわが子を追いかける姿も。
オガーレ内に入ると、産直の魚や野菜、お土産を販売し、港のレストランでは紅ズワイガニやハタハタしょっつる鍋がおいしそう。レストラン、食堂、カフェ、居酒屋など20軒を超す飲食店が並ぶ。電動自転車のレンタルサービスも。

駅から徒歩10分、8月14日開催予定の花火大会会場の広大な船川港湾緑地・OGAマリンパークがあり、各種スポーツ大会や釣り、散歩コースとして賑わう。ところで、昨年秋から静かに人気なのが、元宮大工の佐藤直忠さんがコツコツと趣味で45年ほどかけて造り上げた日本庭園「彩雲庵」と日本家屋。23年秋、男鹿駅周辺の新たなみどころとして誕生。地元で神社仏閣や住宅建設を手がけた佐藤さんは若くして約千坪の山を購入。仕事の工事中に処分を頼まれた庭石や石燈籠、庭木の再利用も兼ねて庭園を造り上げた。仕上げに、茶室も備えた日本家屋を建て、技術の粋を詰め込んでいる。
完成当初は知り合いと語らい老後の住み家とするはずだったが「一人で楽しむにはもったいない」との声が強く公開することに。園内はツツジや松、カエデなどを植栽。池を中心に庭石を配置し2つの東屋も設けた。


佐藤さんは県展で入選するほどの彫刻作家でもあり、日本家屋にあふれるほど置かれた作品は見学自由。そして、佐藤さんが宮大工を志したきっかけが、生家近くにある大龍寺。お寺の境内で子供の頃を過ごした。
大龍寺は昔からの名刹で、歴史のある庭園と、多宝塔様式で鐘楼を兼ねた龍王殿、数多くの仏像など見所がいっぱい。この日は境内も園庭もツツジが満開だった。創建は室町時代以前で、数度の移転を経て、今は曹洞宗のお寺に。東洋大学創立者の井上円了や歌人の折口信夫、五代目と六代目の三遊亭円楽など新旧の文化人が訪れている。
お寺であるが、美しい近代和風建築と庭園を備えているのは、もともと男鹿出身で実業家・澤木晨吉が別荘だった1万2000坪の屋敷を「楽水亭」として寺院に寄進したことによる。(ペンとカメラ・伊藤志郎)
◇彩雲庵…第2・4水曜定休。入園料500円。来園は遅くても前日までに電話を。電話0185―24―4175。