海と陸、肉食と草食を問わず、地球で暮らす哺乳類たちが一堂に会し、大行進を繰り広げる―。
国立科学博物館(東京・上野公園)で開催中の特別展「大哺乳類展3―わけてつなげて大行進」(主催・同館など)の一場面だ。クジラの骨格が宙を舞い、クマの標本は今にも獲物目掛けて動き出しそうだ。思わず「荘厳」「圧巻」という言葉が浮かんでくる。
同展のテーマは「分類」や「系統」。ズラリと勢揃いした動物たちの「大行進」も、近いグループごとに並んでいるというから興味深い。例えば、クジラやシャチの仲間は、なんとシカやイノシシなどと同じグループにまとめられている。これには驚く人も多いだろう。実はこれらは「鯨偶蹄目」と呼ばれる分類群。遺伝子情報の解析技術が進んだことにより、近年、クジラなどの生き物がカバと「姉妹関係」にあることが分かり、世界中に衝撃を与えた。
そのため、鯨類(クジラ・イルカ・シャチなど)と偶蹄類(ウシ・シカ・カバなど)
を含む分類群として、「鯨偶蹄目」という名称が用いられるようになったのだという。このように哺乳類を「グループ」という視点で見つめると、いつもと違う発見がいくつもあるのが同展の魅力だ。
ほかにもアルマジロとセンザンコウなどのように、見た目は似ているのに分類群は全く異なる生き物も紹介。両者とも装甲を持った体が自慢だが、アルマジロは被甲目というグループで、アリクイやナマケモノに近い。
一方、センザンコウは食肉目(ネコ・オオカミなど)と近縁の鱗甲目だ。ちなみにアルマジロの装甲は皮膚の中に形成された骨であり、センザンコウのものは角質化した分厚い皮膚だが骨は含まれていない。丈夫さはアルマジロの方に軍配が上がるようで、過去に銃弾を弾いて周囲の人間を負傷させる事故も起こったほどだ。
多様性にあふれた哺乳類たちだが、心臓が「二心房二心室」である点は共通だ。同展入口近くのエリアでは、地上最大の哺乳類「シロナガスクジラ」の実物大心臓レプリカが展示。小さなネズミも巨大なクジラも、そして人間も心臓の構造は同じ。そこにもまた、自然の妙味を感じさせる。
入場料(当日券)は一般・大学生2100円、小中高校生600円、未就学児は無料。6月16日まで。(文と写真・石井孝秀)