住民の陳情から地方議会が自粛へ
神奈川県内の議会で、日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」を含む「政党機関紙の庁舎内勧誘行為の自粛を求める陳情」が次々に採択され、9月議会終了時点で12自治体になった。政党機関紙購読の勧誘自粛の動きが全国に広がりつつある。(「しんぶん赤旗」問題取材班)
9月議会において採択された自治体は、大和市、座間市、伊勢原市、厚木市、寒川町。さらに、海老名市と清川村で「趣旨了承」(陳情の内容について、議会として賛同)された。
神奈川・12市町村で自粛へ
9月議会前に採択された自治体を含めると12自治体(33自治体中)になった。
庁舎内の政党機関紙勧誘に関しては、世界日報が今年5月から6月にかけ、全国の各自治体に調査した結果、「議員に勧誘された際に、購読しなければならないという圧力を感じた」と答えた職員の割合は、多い自治体で最大8割存在していることが明らかになっている。
厚木市議会では、総務常任委員会である議員が「職員は言葉に出せないで、仕方がないという気持ちで対応している。役所OBの職員は、『後輩のためにこういうのを早くやめさせてほしい』と本音をはっきりと言っていた」と述べ、問題意識を共有した。その上で、10月5日に本会議採決が行われ、賛成22反対5の賛成多数で採択された。 各議会では「政党機関紙勧誘が職員へのハラスメントにつながりやすい問題」であり、そもそも政党機関紙勧誘が庁舎管理規則に違反していると指摘されている。
寒川町議会では、賛成討論した議員が、「勧誘の根拠として政治活動の自由を主張するが、実際には、庁舎内の営業活動に該当する行為」であると指摘。伊勢原市でも、議員から「庁舎管理規則に違反しているのであれば、一刻も早く、改善すべきである」との意見が出た。
横浜市では、陳情に対して、「付託外」(議長から直接、市長等に回答を求め、この結果を陳情者に伝えること)として議員に陳情書を配布した上で、市役所の関係部局に照会。その結果、9月22日付の文書で次のように回答した。
「横浜市庁舎では、横浜市庁舎管理規則に基づき、政党機関紙の勧誘及び販売行為など、政治的な活動に関する行為及び営業行為を許可していません」「個人情報を含む情報管理の徹底等のため、執務室内は職員以外の立ち入りが出来ないセキュリティーとなっています」
横浜市として、政党機関紙の勧誘行為が庁舎管理規則の「禁止事項」であることを明言した。
9月議会では、陳情審議の結果、不採択となった議会もあったが、その半数以上が「本自治体では庁舎内での勧誘の事実がない」ことを理由として挙げている。
これまで全国の多くの自治体で、半ば慣習的に政党機関紙の勧誘が続けられてきた事実がある。共産党などの一部議員が「議員には政治活動の自由があり、庁舎管理規定は適用されない」と強く主張し、庁舎内で営業許可の申請を拒否してきたためだ。共産党神奈川県議団は9月15日、黒岩祐治知事宛てに、政党機関紙の購読などを制限しないよう申し入れた。職員に政党機関紙の購読を働き掛け、配達・集金する活動は、憲法に保障された政治活動であり、購読は職員個人の思想・信条の自由、内心の自由の問題であるとし、勧誘・営業を続ける正当性を訴えている。
横浜市在住の出井健三郎さん(70)は「今年の春、庁舎内で機関紙勧誘があるにもかかわらず、議員は見て見ぬふりをしているという話を友人から聞いて問題だと思った」と陳情を提出した動機を語った。各議会で採択していることを「当然のこと」とした上で、「いい流れができている」と話した。
ある行政担当者は「許可申請があれば、当然にその可否を判断する」と話している。大多数の議員が勧誘を自粛している中、今後も一部議員の無許可での営業行為を見過ごし続けるのかどうか、役所の対応が問われることとなる。