
子供を取り巻く環境が深刻さを増している。いじめや不登校など複数の指標で過去最多が続き、問題の広がりが浮き彫りになっている。こうした中、日本サッカー協会(JFA)と日本財団はスポーツを通じた子供支援に向けて新たな取り組みを始めた。(山田芙珠美、写真も)
JFAと日本財団は3月17日、スポーツを通じた子供支援に関する包括連携協定を結んだ。その際の記者会見で公表された子育てを巡るデータは、日本の未来を憂えるものだった。
令和6年度に小中高校で認知されたいじめは76万9022件、不登校の児童生徒は42万1752人に上り、いずれも過去最多となった。文部科学省などの発表によると、いじめや暴力行為も増加が続き、いじめの重大事態は1404件、暴力行為は12万8859件に上る。自殺した児童生徒の数も529人と過去最多となった。子供を巡る複数の課題が同時に深刻化している。
児童虐待の相談対応件数も増加傾向が続いている。児童相談所が対応した虐待は22万5509件に上った。ひとり親世帯の子供の相対的貧困率も44・5%と高い水準にある。
これだけではない。生活面にも影響が広がっている。肥満傾向の児童が増える傾向にあり、5歳児と小学6年生で、男女共に過去最高となった。逆に、高校3年生では痩せ過ぎの傾向も見られる。さらに、裸眼視力1・0未満の割合は小中高の全世代で上昇しており、小学生で36・07%、中学生で59・35%、高校生で71・51%に達している。
こうした背景には、子供が自由に遊べる場が不足していることが挙げられる。屋内中心の生活やデジタル機器の普及に加え、徒歩通学の減少や、対人関係のつながりの希薄化などで、体を動かす機会が減っているのだ。こうした環境の変化が、心身の成長や学びに影響を及ぼしている。

包括連携協定が結ばれたのは、こうした課題に対応するためだ。スポーツを通じて、自己肯定感の低下や体力不足、不登校の増加といった問題の改善を目指す。
記者会見でJFAの宮本恒靖会長は、「スポーツは人を元気にするだけでなく、社会を支える力にもなり得る」と述べ、「子供たちの未来を守り、地域のつながりを強くする」と強調した。
自己肯定感育む授業・スポーツ環境の整備・災害支援と地域交流
今回の連携で、両者は「ゆめのたねの教室」「キッズピッチ」「トレーラーハウス」の3事業を軸に取り組むことが発表された。
「ゆめのたねの教室」では、スポーツを通じて自己肯定感を育む授業を実施する。社会人野球チーム「茨城ゴールデンゴールズ」の片岡安祐美監督は「自分の『好き』を大切にしていいと思えるきっかけになれば」と話した。
「キッズピッチ」では、子供たちが自由にボール遊びができる環境を整備する。日本フィギュアスケーターズ協会の小塚崇彦代表理事は「安心して体を動かせる場所をつくりたい」と意気込みを示した。
「トレーラーハウス」は、災害時の支援拠点となるほか、平時は地域交流の場として活用する。JFAリスペクト委員会防災・復興支援部会部会長の永島昭浩氏は「子供たちと防災を考えていきたい」と述べた。
日本財団はこれまでも、子供を取り巻く環境の改善に向けた取り組みを進めてきた。経済的に厳しい家庭や家庭環境に課題を抱える子供を対象に支援事業を展開し、放課後に安心して過ごせる「子ども第三の居場所」を全国で整備している。
こうした取り組みが今後、地域のつながりを再生し、子供の成長を支える環境づくりにつながることが期待される。






