
イスラム暦で今年のラマダン(断食月)は3月2日から31日までの30日間。この期間はイスラム教を信仰する人々いわゆるムスリムは断食を遂行する。近年、国内でイスラムの人々が増加している。そんな中、「北海道イスラミックソサエティ」(HIS、宗教法人)ではこのほど、ラマダンに合わせてイスラム文化の理解を促すためのラマダンパーティーを実施した。(札幌支局・湯朝肇)
断食で浮いたお金を寄付
ハラル料理提供、地元住民と交流
「イスラムの本来の意味は、皆が平和になるように、ということです。イスラムの人々はラマダン期間に断食します。日没後には断食明けの食事を取りますが、今日は皆さんと一緒にハラル料理を食べて交流の場を持ちたいと思います」――こう語るのは、北海道イスラミックソサエティのアラム・モハマド・トゥフィック会長。今年のラマダンのちょうど真ん中の日に当たる3月15日、札幌市内でHIS主催のラマダンパーティーが開催された。会場には、ムスリム以外にイスラムに関心のある市民も参加、合計で400人余りとなった。
この日のパーティーではまず、イスラム教のイマーム(導師)であるイシマエル・モハンマド師がイスラムの教えやラマダン期間に行う断食の理由や効果について説明。また、イスラム教の聖地とされるサウジアラビア・メッカの巡礼の様子なども紹介した。
そもそもラマダンとはイスラム暦(ヒジュラ暦ともいう)の9番目の月。この月を断食の月と定められたのだが、一日のうちで断食する時間は日の出から日の入りまでの時間。この間は食べてもいけないし、水を飲むことも禁止されている。従って、一日で食事できるのは日没後ということになる。
「イスラム教で行われる断食は、皆に見せるためのものではなく、断食する人と神様との心のつながりを確認するためのものです。断食することで浮いた食費を貧しい人に寄付することも善行となり、人格的な深まりにつながります」とイシマエル師は断食に対する心構えが精神的な深まりにつながると指摘する。さらにラマダン月の断食は、皆で行うことから連帯感が生まれ、特に断食明けは一緒に食事することで一体感や達成感を味わうことができると説く。

ラマダンパーティーでは、この日の日没時間が17時47分であったことから、その時間にアザーン(祈祷(きとう)の呼び掛け)が行われ、メッカに向かって祈祷した後、ハラル料理が配られ食事となった。食事のメニューはパキスタンライスのプラオの他に、野菜や肉や野菜の入ったサムサや、ポテトや豆の入ったカバブ、さらにサラダやパキスタンスイーツなどが振る舞われた。今回のパーティーに参加した札幌市在住の紫藤裕さんは「パキスタンライスはスパイスが利いて日本のライスとはかなり違いますが美味(おい)しいです。空腹であればもっと美味しいと思います」と感想を述べる。
食事の後は、イスラム教や文化を題材にしたクイズや質問の時間が持たれたが、「断食中、どうしても空腹に耐えられず、食べてしまったときはどうなるのか」(導師の答え:ラマダン期間以外の別の日にその日の断食を行う)「メッカの巡礼の際に男性と女性で祈る場所は異なるのか」(別々の場所がある)「日の出、日の入りの時間は各地で異なるが、一斉に行うのか」(各地の日の出、日の入りの時間に合わせる)「北海道にモスクは何カ所あるのか」(現在は3カ所)といった質問が矢継ぎ早に出るなどイスラムに対する関心の高さが目立った。主催したHISのトゥフィック会長は「日本ではイスラムは海外に比べて好意的に受け止められていると思います。私たちはイスラムの教えにのっとって安心できる社会を地域の人々と共につくり上げていきたい。そのためにもこのような理解を深める場をこれからもつくっていきたい」と話す。