
静岡市が地元の模型メーカーと連携して「プラモデル化計画」に取り組んでいる。地場産業を生かして街の魅力をさまざまな形で発信し、地元愛も育む試みだ。街角には、組み立て前のプラモデルのパーツを模した「プラモニュメント」を増やし、徳川家康が戦国時代に着用した甲冑(かっちゅう)や新幹線のモニュメントも登場している。
地場産業生かし魅力発信
甲冑や新幹線のパーツも登場
▽街角にモニュメント
静岡市内には模型メーカーのタミヤ、青島文化教材社の本社やバンダイの生産拠点などがある。2020年の市のプラモデル出荷額は全国1位で82%のシェアを誇る。
江戸時代から、周囲の森林資源を生かした木工加工の先進地だった。駿府城の築城や家康を祭る久能山東照宮の造営などで優れた職人が集まり、技術を受け継いだ模型産業の発展につながったという。
プラモデル化計画は20年2月から始まった。市は22年度にプラモデル振興係を置き、官民でさまざまな取り組みを加速。計画のシンボルでもあるプラモニュメントはすでに13基あり、市は民間の設置者に費用の一部を助成して今後、30基まで増やすことを目指している。

▽「模型の世界首都」PR
プラモニュメントはステンレス製で、それぞれ特徴がある。「郵便ポスト」では実際の手紙の投函(とうかん)、「公衆電話」では電話が可能。「模型の世界首都静岡」のロゴ入りモニュメントでは、その一部に自身が入っているように記念撮影できる。
プラモニュメント巡りも楽しめる。家康が着用した甲冑「金陀美具足(きんだみぐそく)」のモニュメントがあるのは、家康が晩年を過ごした駿府城。JR静岡駅には新幹線の座席と電光掲示板、静岡済生会総合病院には救急車などをイメージしたプラモニュメントが設置された。
市の担当者は「静岡といえばこれ、というシンボルがなかった。静岡が誇る地場産業をPRしたい」。新幹線のプラモニュメントを設置した静岡ターミナル開発の担当者は「モニュメントを回って写真を撮る人も多い。地域貢献につなげたい」と話す。
▽授業でプラモ作りも
模型メーカー側も「ホビーのまち」のPRに積極的だ。静岡市では毎年、国内最大級の模型展示会「静岡ホビーショー」が開催され、数万人が参加している。昨年は12月7、8の両日、メーカーなどでつくる協議会と市が協力し、高校生を対象にした全国プラモデル選手権大会も初めて催された。
小学校ではキャリア教育の一環としてプラモデル制作を取り入れており、今年度から一部の中学校にも拡大。ここでも模型メーカーが協力し、小学校では社員が制作を指導している。
市内にある伝統工芸の体験施設「駿府の工房匠宿」では23年、従来の竹細工や藍染めなどに加えてプラモデル組み立ての体験工房がオープン。監修したタミヤの広報担当者は「プラモデル業界を盛り上げ、ものづくりの魅力を知ってもらいたい」と話す。今後も行政などと連携して活性化策を展開する考えだ。
(時事)