ゾウと共通の祖先を持つ

灰色のボディーに分厚いくちびる、しゃもじのような尾びれを上下に振ってゆったり泳ぐ巨大生物「マナティー」。一生を水中で過ごす草食性の哺乳類で、体長3~4.5メートル、体重300~1000㌔に成長します。日本では4カ所の施設で見ることができ、香川県高松市にある新屋島水族館では、2頭のマナティーが大人気です。
▽大昔は陸地に

新屋島水族館で暮らすオスのベルグ(34)とメスのニール(32)は、大きな体つきが特徴の「アメリカマナティー」です。アメリカ・フロリダ州からブラジル北部の温かい川や海に生息しています。2頭はドイツの動物園からやって来ました。
マナティーは大きく分けて3種類。アメリカマナティーのほかに、アフリカ大陸の西側に生息し、貝や小魚も食べる「アフリカマナティー」、南アメリカのアマゾン川に生息し、おなかに白い模様がある「アマゾンマナティー」がいます。
マナティーは海牛類と呼ばれるグループに属し、沖縄などの海で暮らす「ジュゴン」が最も近い仲間です。ゾウとは共通の祖先を持ち、大昔は陸にいました。その名残(なごり)で、前脚に爪があるマナティーもいます。
▽1日を寝て過ごす

ニールとベルグの世話をする三浦宏祐さんによると、2頭は1日のほとんどを寝て過ごすそうです。「10分ごとに息つぎをして、寝たり起きたりを繰り返しています」と説明してくれました。
野生のマナティーは主に水草を食べますが、2頭はレタスやニンジンなどの野菜を1日に30キロほど食べるそうです。三浦さんが「大好物はサツマイモです」と教えてくれました。くちびるを器用に使って野菜を口の中に運び、モグモグとおいしそうに食べていました。
▽水が汚れて餓死
野生のマナティーと私たち人間の暮らしには深い関わりがあります。水の汚(よご)れが原因で食べ物がなくなり餓死するマナティーや船にぶつかり大けがをするマナティーがいるそうです。
アメリカでは、傷ついたマナティーを助ける活動が行われています。マナティー研究者のコーラ・ベルへムさんも活動に関わる一人です。ベルヘムさんはメールでの取材に対し、「マナティーは60歳(さい)以上生きることがありますが、残念なことに多くが若いうちに死んでしまいます」と答え、その上で「マナティーの問題を多くの人に知ってほしいです」と訴えました。
(時事)
新屋島水族館
香川県高松市で人気の観光地「屋島」の山頂付近にある水族館。1969年に「屋島山上水族館」として開館した。2006年の事業譲渡に伴うリニューアルオープンにより、現在の名称に変更。アクリル素材を使った大型水槽を世界で初めて設置し、現在は約200種類、3000匹の海洋生物を飼育中。日本に6頭しかいないアメリカマナティーが見られるのは、沖縄県の「美ら海水族館」と同館だけ。