トップ社会教育秋田の学校農園で全人教育 鹿角市の小中10校など発表展示

秋田の学校農園で全人教育 鹿角市の小中10校など発表展示

10校が展示発表した学校農園展=秋田県鹿角市

「寒い中で広い田んぼに肥料をまいたり草取りも大変だったけど農業で就職したい」「育てた枝豆を喜んで買ってもらって、すがすがしい気持ち」秋田県鹿角(かづの)市でこのほど小中学校など10校が参加して「学校農園展」が開かれた。農園活動をする中で、子供たちの苦労と喜びが素直に表現され、全人教育の一環として重要視されている。(伊藤志郎)

種まきから収穫、料理まで

苦労と喜び体感、新たな気付きも

この農園展は、第147回県種苗交換会の一環として開かれた。同会は、県の農業従事者の種苗交換と交流の場として秋田県が1878(明治11)年に始めたもので、途中からJA秋田中央会が引き継ぎ、主催している。

そして1983(昭和58)年の大館市での開催から学校農園展も並行して実施され、第42回を迎えた。今年は小学校3校、中学校2校、特別支援学校5校の計10校が展示発表した。JA関係者や地域の人に手伝ってもらいながら学校内外の農園で活動した記録である。

学校の取り組みはさまざまだが、学校農園の主な流れは、種まきから収穫、販売、調理して自分たちや保護者を集めて食事会を開くなど幅広い催しとなっている。

湯沢市立雄勝(おがち)小学校では、主に4年生が枝豆栽培に取り組んだ。6月6日に「秘伝」という品種を種植えし、9月26日には3年生も交えて収穫し選別から袋詰めまで行った。27日の販売会では用意した93袋が5分もたたずに完売した。「収穫や枝豆を籠に入れる作業が大変だったが、お客さんに喜んで買ってもらって、すがすがしい気持ちになれました」などの声が児童たちから聞かれた。

学校全体と部活動の双方で実施しているのは横手市立大雄(たいゆう)小学校。学校では、3年枝豆、4年ホップ、5年米作り、6年手前味噌(みそ)造りと学年で異なる体験・取り組みをした。栽培計画の話し合いから始め、土の中の石拾いや鍬(くわ)の使い方、畝(うね)立て、肥料まき、鳥よけライン張りなど、農家の人が実際にやる工程を含めているのが興味深い。

大館市立第一中学校の生徒が育てたカボチャ類

イチゴの収穫体験やオクラ、サツマイモ、大根、トマト、白菜、里芋も栽培。8月にはパスタやサラダ、スープなどを作り保護者に振る舞う「グルメ大作戦」を実施している。

比内支援学校は小中高全体で「6次産業化を目指して!」をテーマに掲げた。収穫した野菜で①ランチを作り②長ナスを加工して乾燥なすにし③50種類のバラを育てて花プロジェクトで飾るという。6次産業とは「1次産業(農林漁業)×2次産業(加工)×3次産業(販売・サービス)」を統合したものをいう。

一方、秋田市立岩見三内(いわみさんない)中学校では2年生が野菜や花を育てて販売した。その中で一人の女生徒が「農薬を一切使用せずとも、野菜が虫に食われないのはカエルが害虫を食べてくれるから」と気付いた。幅広い教育効果がうかがわれる。

変わったところでは、野菜原産地の育て方を調べ、今の育て方に生かす取り組みをした大館市立第一中学校がある。例えばスイカは南アフリカ・カラハリ砂漠原産だから日本ではマルチやトンネルで雨や寒さをしのいでいるのだという。

感想文で目を引いたのは、イチゴやスイカを育てて畑仕事を自信満々に話す祖母がいる男子生徒。「自分が育てた野菜を食べた人が喜んでくれるので、畑仕事が大好きです」と述べ、店ですぐ買える野菜だが、自分で育ててみて、時間と手間、費用が想像以上にかかることを知って「残したり粗末にしてはいけないと深く感じました」と書いている。

審査に携わった県教育庁・山本出張所指導主事の高橋毅さんは講評で「植物の日々の成長や変化、実りから生命の営みを実感できることには大きな意義がある」と述べ、「根気強く水やりや草取りをすれば小さな種が大きな花や実となることへの驚き、困難なことも仲間と協力して乗り越えられたことなど、みずみずしい感性で捉えた多くの気付きが書かれており、農園活動を通して心も成長していることを感じました」と結んでいる。

学校農園展で発表しないまでも、県内で農園活動をしている小中学校は多い。特に田植えと稲刈り、花壇作りは、ほとんどの学校が取り組んでいる。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »