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道徳教育は全ての教科の要 東京学芸大で「道徳パワーアップセミナー」

「次世代型授業」テーマに永田繁雄教授が講演

「令和に生かす次世代型の道徳授業をつくる」と題して東京学芸大学で「道徳授業パワーアップセミナー」(先端教育人材育成推進機構)がオンラインと対面で開かれた。「次世代に生かす道徳授業をどうつくるか―これからを生きる子どもが自ら問い続ける力を育む―」と題して同大の永田繁雄教授が講演した。以下はその要旨。(太田和宏)

子供の「主体的学び」実現へ教師や保護者は後押しを

道徳教育はすべての教育活動を含んでいる。活性化剤は心を沸き立たせるもので、接着剤は子供同士、教員と子供、地域と家庭と子供などの関係をつなげていくというものだ。「先の見えない時代」の道徳教育はどのようにしたらいいのか。教員や保護者は子供に対して、先頭に立ち、引っ張るのではなく、後押ししてあげる発想を持つ方向に、体質改善していかなければならない。

十数年前に英オックスフォード大学教授のマイケル・A・オズボーン氏はAI(人工知能)が雇用や生活に与える影響は大きく、「2030年までに米国の雇用の47%(約半分)が自動化する」と予想している。10年前から、一部ではオンラインで仕事ができるようになり、いろんな職業の形態が変わってきている。子供たちはその先を生きていくことになる。

東京学芸大の永田繁雄教授

教師の仕事も変わってきている。教育という言葉は教え育むということだが、教えることはICT(情報通信技術)端末、タブレットに移行され、子供の一人ひとりができていること、できていないことを判別し、何に力を注いで学習させればよいのか。これからの時代はAI任せになり、教師が考えなくても済むようになっていく。教師の仕事は育むことが中心になっていくだろう。

生まれた時からインターネットが常備されていた人のことをZ世代というが、今の子供たちはその先を行くα世代と呼ばれる。徹底してデジタルネイティブ、オンライン、ダイバーシティー、社会的課題の解決型の学習を行っていくことになる。予想を超えた環境の中を生き抜いていくことになる。

「守り」とは守破離の展開の最初の部分だから、なおざりにはできないが、守りは教師がハンドルを手放さないこと。守ってばかりだと劣化していく。「攻め」は子供にハンドルを持たせること。子供がゴールに辿(たど)り着けないこともあるが、それでいい。本当に良い授業というのは、先生の思うようにいかない授業。子供が20~30人いて、先生の手の内で思うように授業が進むというのは恐ろしいことだ。

「SDGs」は道徳教育と深く関わり、強調されている地球温暖化とか地球沸騰化とか言われたり、ダイバーシティー、戦争なき社会などで表され、社会全体の下敷きである。持続可能な社会のつくり手を育成することであり、一人ひとりの考え方の持ち方がある。日本型「ウェルビーイング」の向上にどう向き合うか。最低限の幸せ、健康から、最高の幸せに向け、道徳教育と、それぞれはつながりを持っている。

道徳・特活、総合は中学校から高校まで変わらないけれど、道徳と特活は連動して変わっていく。人間としての在り方、生き方を考えるもの。学校で計画的に行う体験学習がある。キャリア教育、環境教育、情報教育、いろんなものが教育の現場で重なっている。子供にハンドル(主体性)を持たせないままで「将来はハンドルを持て」なんてできるはずがない。

道徳科を要(かなめ)とする道徳教育は「主体的な生き方」に向かう「主体的な学び」である。これが、文部科学省の言う「主体的・対話的で深い学び」につながっていく。「主体的な学び」を実現するには自己を見詰め多角的・多面的に考え、自己の生き方について考える。道徳教育の目標は自己の生き方を考え、主体的な判断の下に、自立した人間として他者と共によく生きること。

教師のポジションとして、最初から子供に任せっきりというのはいけない。最初は個別最適で潜在能力を活性化できるよう先導者として問いを発し、子供の考えを絞ったり、広げたり、補足したりするようなヒントを与える支援的な問いを伴走者として発する。解釈のズレを突いたり、既成概念を砕く、揺り動かすなどの仕掛け的な問いも必要になっていく。

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