トップ社会教育少子化進み受験生の競争が減少大 学入試改革でROJE主催フォーラム

少子化進み受験生の競争が減少大 学入試改革でROJE主催フォーラム

教育ジャーナリストの後藤健夫氏が講演

NPO法人日本教育再興連盟(ROJE)主催の五月祭教育フォーラム2024が、対面とユーチューブ上で開催された。大学入試改革が叫ばれる中、今年のフォーラムでは『再考総合型選抜~評価されるべき「学力」に迫る~』と題して、東京大学本郷キャンパス法文2号館31番教室で行われた。「『母校がなくなる日』少子化と大学入試・総合型選抜」と題してコラムニスト・教育ジャーナリストの後藤健夫氏が講演した。以下は講演要旨。(太田和宏)

勉強せずとも受かる時代に

大学で“学ぶ”ことに苦労

勉強のできる子供たちは国立大学を目指し、競争力を失った学生たちはどこでも、大学に行ければいいやと投げやりになる。少子化がさらに進んだ18年後の大学入試を推測できるだろうか。去年生まれた75万8000人が18年たち大学入試を受ける頃、大学の入学定員63万5000人がそのままで進学率が6割くらいと想定すると、18万人分程度が余剰となる。18万人というのは比較的大きな2000人規模の大学が90個つぶれるということ。実際には海外から留学生とか入ってきて、そうはならないだろうが、イメージとしてはこんなものだ。

大学入試の3年前に高校入試が少子化の影響を受ける。高校入試がどうなるか、都市部を除き、全国で定員割れを起こし、選抜試験が無意味になってくる。高校で選抜試験が無くなるというより、できなくなる。

教育ジャーナリストの後藤健夫氏

日本で一番大きな問題は少子高齢化。それから生成AIが盛んに使われ、デジタル化が急速に進んでいく。産業構造の転換が求められて、軽微な仕事は必要なくなってくる。今は大学入学定員は私立を中心に圧倒的に人文・社会学系が多いけれど、理系にシフトしていかないと立ち行かなくなる。

教育未来創造会議で理系を5割に増やそうという話が出てきた。データサイエンス系を作ると、「補助金を4年間出しますよ」という方針が出れば、そちらに大きな波ができる。大学の予備校化している現在の高校教育をどうするのか。女子をはじめとして、理系の志望者を増やさないといけない。それで「探究型の授業」「DXハイスクール」「スーパーサイエンスハイスクール」などが始まっている。

元来、大学入試って何を測定するのか。その大学の教育に必要な基礎学力。高校で学ぶ意欲が無かったら測りようがない。文部科学省は「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人と協働して学ぶ力」を学力の3要素としているが、そんなもの、入試で測ることはできない。

一般選抜は知識と思考の活用を見ている。総合型選抜は思考と経験の活用を見ている。平均点、順位、偏差値などは母集団が変われば全部変わる。毎年入試をすると全部変わってくる。どこの大学もみんな違ってくる。

実際に起こっているのは負の競争「赤信号、みんなで渡れば怖くない」状態になっている。国立大学や有名私立大学なら入試段階で競争がある。だが、勉強しなくても、選ばなければ大学に受かる時代がやって来る。

だから結果的に「学ばない生徒」が「学べない学生」を生んでいる。高校で勉強の仕方を知らない生徒が増えている。だから、学ぶことは覚えることだと思っている生徒は大学に行って“学ぶ”ことに苦労している。競争という相対的な価値観から絶対的な価値観に転換する時期に来ている。

競争試験は定員があるから合否を決めてくれる。資格試験というのはある一定のバーを越えて行く。そうしないと「やる気」というものが湧いてこない。模擬試験も合否の判定からアセスメント(大学に入学してどういった知識・思考が大切になるか事前に説明される)に向かっていく。

あなたは何が分かったのか。講評や結果の返却、あと自己採点で結果をどう判断するか。ギガスクール構想だったり、教育未来創造会議で議論されること。国公立大学や有名私立大学の入試対策をしている進学校は半数以上が一般選抜を受けていない。大学入学準備教育の方に力を入れる時代になっている。

選抜しないんだったら学生の学ぶ意欲を育てることが大切になってくる。

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