親子で海洋環境と海の安全学ぶ-沖縄県
海保職員の講義に聞き入る

サンゴ移植、マリンスポーツ体験も
海での活動を通して社会性や公徳心を養い、国際性豊かなリーダーの育成を掲げて活動する公益社団法人日本海洋少年団連盟・沖縄地区連盟は7月15、16の両日、「第16回美ら海体験教室」(共催=一般財団法人近藤記念海事財団)を開催した。県内同少年団所属の小中学生約70人とその保護者らが参加し、海洋環境教室や、サンゴの移植などを体験したほか、マリンスポーツやビーチクリーン活動などで海に対する学びを深めた。(沖縄支局・川瀬裕也)
周囲を海に囲まれた海洋国家である日本の子供たちにとって、海について学ぶ意義は大きい。とりわけ、県全体が海に囲まれた沖縄県の子供たちにとって海は特別な存在だ。その海について学び、体験する「美ら海体験教室」が今年も行われた。
海洋少年団連盟が、子供たちに、自然の大切さを伝え、日本の未来を担う人材を育成することを目的に毎年開催しているイベントで、今年で16回目を迎える。
1日目、浦添市の浦添・宜野湾漁業協同組合で実施された海洋環境教室では、第11管区海上保安本部の職員による、海の自然環境の解説や海洋ゴミ問題などについての講義が行われた。「漂着ゴミはどこからやってくる?」「海が汚れると生き物たちはどうなってしまうの?」などクイズも交えながら進行され、子供たちは自分自身の考えを発表し合い、環境問題への考えを深める時間となった。
2コマ目の講義では、マリンレジャーを安全に楽しむための教育が行われた。海保職員が、沖縄の海で過去に実際に発生した海難事故の事例を紹介しながら、どこに危険が隠れているのか、事故に遭遇した場合にどのような行動を取ればよいかなどを解説し、子供たちは熱心に聞き入っていた。
その後、参加者らは沖電開発株式会社・水産養殖研究センターへと移動。サンゴの生態について学び、実際にサンゴの養殖を体験した。

沖縄は世界でも有数のサンゴ礁で形成された地形だが、近年陸地開発や海水温の上昇などの影響でサンゴ礁が破壊されたり、褐虫藻がサンゴから抜け、石灰質の白色が目立つ「白化現象」などが起こっている。これらの問題に取り組むため、多くの環境保護団体や企業などが連携し、サンゴの養殖を行っている。
子供たちは実際に養殖に使われるサンゴの苗作りを体験した。まず養殖の土台となる岩にそれぞれ好きな絵を描き、色を付けた後、生きたサンゴを土台に固定し、「はやく大きくなってね」などと声を掛けながら養殖プールにそっと入れた。この苗は施設内のプールで2~3カ月育てた後、実際に海に放流されるという。
消しゴムほどの大きさの苗が3年たつと、大人の拳ほどに成長するといい、説明を受けた参加者の男児は「そんなに大きくなるんだ」と驚きを隠せない様子。養殖体験の後、ウミガメへの餌やり体験や、ヒトデなどの生物と触れ合う時間もあり、子供たちは大興奮だった。
2日目には宜野湾港マリーナ(同市)でマリンスポーツ体験とビーチクリーンを体験し、日程が終了した。
今年初めて参加したという女児(10歳)は、「海の大切さが良く分かった。大きくなったサンゴ(の苗)を見てみたい」と笑顔を見せる。一緒に参加した父親は、「沖縄に住む自分たちにとって海は切り離せない存在。海について多くのことを(娘に)学ばせることができて良かった」と感想を話した。
主催者である同地区連盟の長谷川順一事務局長は、「座学と各種体験を通して、子供たちが海洋の問題について考えるきっかけになればうれしい」と、開催の意義を語る。
「海に囲まれているのに海で遊ばない」などと揶揄(やゆ)されることもある沖縄の子供たちにとって、同イベントは、海と向き合う貴重な2日間となったに違いない。