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「学びの深化」「学びの転換」導く教育を

福岡県北九州市門司区 敬愛小の龍達也校長 ICT活用授業で講演

ICT活用授業について講演する龍達也敬愛小学校校長(上)と宝仙学園小学校で行われた4年生理科の公開研究授業

東京都中野区にある学校法人宝仙学園小学校で進められている「タブレット端末」を使った授業の進展具合と今後の課題について、公開研究授業が行われた。その中で福岡県北九州市門司区にある敬愛小学校の龍達也校長が『ICTを活用した「学びの深化」「学びの転換」』と題して講演した。(太田和宏)

AIから得た知識を活用し自ら考え創造する力が必要

「究極を突き詰めれば、小学校、中学校、高校、大学と成長していく中で、しっかりと自分というものを持って、幸せに暮らしてほしい、ということだ」。教育を通して普遍的な子供に対する気持ちをこう語るのは敬愛小学校の龍校長だ。

今年小学校に入学した子供が一人前の社会人になるのは2050年ごろになる。日本の人口は現在より2800万人ほど減り、高齢化率は約4割、サービス産業や単純労働はロボットや機械に取って代わられていく。人間は産業の発展や研究事業に特化、クリエーティブな仕事、新しい仕事を開拓する時代になっていく。

教育の世界は「知識を蓄え、テストで良い成績を取る、良い学校に入る」ということから「未来を生き、担える子供を育む」という方向に転換していく。考える素地となる読む書くという知識は必要だが、これまでにない課題に対して、AI(人工知能)機器から得た知識を利用しながら、自ら考え、創造していくことが必要になる。先生やクラスメートなどの意見を聞き、自らの意見を加工してこれまでなかった答えを構築できる力を持たせてあげ、人を育て、人の感性を育てることがこれからの教師の使命だという。

「自分たちの力で人工衛星を飛ばす」ことを目標に活動した敬愛中・高校の理科研究部を例に取り上げた。部員たちはインターネットで情報を集め、まとめたが、中核的な情報が足りず、近くの大学の教授や大学院生に話を聞いたり、質問したりしながら計画を進めていった。その過程において資金が無いことに気付き、ネット上で自分たちの計画を発表してクラウドファンディングでお金を集めることにも挑戦した。彼らは人工衛星を飛ばすんだという信念に従って行動。昨年9月に米国のスペースX社のロケットで打ち上げた。

また、他の活動では、スーダンで医療活動をしているNPO法人の人とオンラインで交流授業を行った。「水問題」グループはペットボトルで作った簡易濾過器を現地に送り、たくさん配れば「水問題」が解決できると考えた。不衛生な水をそのまま飲用として使用し、感染症になる住民がたくさんいることを改善できると「スーダンに100個の簡易濾過(ろか)器を送ってください」と直談判した。法人の方は「100個持って行っても現地で使って壊れたら、また持って行くの?」と聞き返し「もっと持続可能な方法を考えて」と答えた。

子供たちは考え「動画で作り方を説明、スーダンだけでなく、不衛生な水で困っている人に行き届くよう現地の言葉(アラビア語)で作り方、修理の仕方を説明する動画を作成した。「小学生なのでアフリカまで行けませんが、この動画を見て、きれいな水を使って」というコメントまで添えた秀逸なアイデア・活動となった。

インターネット内の膨大な情報は玉石混交であり、その中から情報をえりすぐり、組み合わせ、加工していくと、少しずつゴールに近づいていく。その過程で百科事典、国語辞典をものすごく多用して、情報選択をして、国語力、文章力も付いてくる。

敬愛小学校・中学校・高校では1人1台タブレットを導入し、ロイロノートのソフト(開発・販売元は株式会社LoiLo、全国1万校以上の国公私立の小中高校、大学、専門学校が利用)を導入しICT技術を活用している。先生自体が活性化し、児童に課題を投げ掛け、児童は自分の考えを持つ、友達に考えを説明し、グループで話し合い、答えを導き出し、共通理解にし、自分の振り返りにつなげていく。発言は「手書き」「キーボード打ち込み」「音声」など個々が好きな方法でやっている。先生は全員の意見を把握し、新たな課題を提示する。龍校長は「公立校を含めすべての学校で利用可能とは言えない。私立校だからできることでもあるが、参考にしてもらえれば」と語った。

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