トップ社会教育「民謡で元気を届けます」 秋田県大仙市・大曲農業高校の郷土芸能部

「民謡で元気を届けます」 秋田県大仙市・大曲農業高校の郷土芸能部

病院など慰問、3年ぶりに早苗振り豊作祈願も

観客の前で民謡を披露する大曲農業高校郷土芸能部の部員=10月7日、秋田県立農業科学館

“大曲の花火”で有名な秋田県大仙市の大曲農業高校に郷土芸能部がある。ここ2年ほど新型コロナウイルス感染症の影響で活躍の場は限られてきたが、「郷土に元気を届けます」をモットーに今年は12人の部員が民謡の継承と地域貢献に元気な笑顔を見せている。

地元の県立農業科学館の「オータムフラワーフェスタ」に合わせ、10月7日午前、2回にわたり民謡を披露。11時からは正調生保内(おぼない)節、秋田おばこ節、ドンパン節など4曲を演じた。三味線、横笛、小太鼓、鉦(かね)の音が響き、唄と共に若々しく切れのある手踊り。観客からは拍手が沸き起こった。

同校卒業生の74歳女性は「笑顔と手振り、あいさつが良かった。伝統が受け継がれることが素晴らしい。ずっと続けてもらいたい」と感想を述べた。郷土芸能部の心構えは①あいさつ・礼儀の徹底②向上心③団結の三つ。みんなの前で、ハキハキとあいさつし、爽やかな唄と踊りがそれを物語る。

また10月30日に開かれた秋田県最大の農業イベント・第145回秋田県種苗交換会で、県の新たなブランド米のデビューを記念する「サキホコレ音頭」大会の決勝ステージに同部の3年生が開催地代表として登壇。県内外の応募27組の中で最後の5組まで勝ち抜いたが、優勝は東京都の日本航空客室乗務員JALふるさと応援隊のチームに譲った。準優勝を果たし、観客から熱い拍手をもらった。

同部の始まりは、昭和40年代の民謡同好会。平成に入って文化芸能部と改称し部活に格上げされた。時の流れに乗って郷土芸能部となった。部員は最盛期40人ほどいたが、少子化の影響を受け昨年と今年はそれぞれ12人。今年は1年4人、2年1人、3年7人となり、少数精鋭を目指してきた。

地元の3人の師匠に教えてもらい、唄と三味線、尺八の腕を磨く。前述した曲に加え、秋田甚句、長者の山など8曲の演目を持つ。練習は火曜日から土曜日まで各2時間。今回は9人が出演した。

主な活動は、学内行事(6月の早苗振〈さなぶ〉り豊作祈願と大農〈だいのう〉祭収穫感謝祭など)への出演、病院や高齢者施設への慰問、そして県内イベントでのステージ発表である。

介護施設などから例年20~30件の要請があり、出張民謡では利用者や入院患者に歌や踊りを披露してきた。しかしながら、一昨年の2020年はインフルエンザの流行、そして去年は新型コロナのため、介護施設などへの訪問が大幅に減った。

そこで昨年は、大曲中通病院のショートステイを部員4人が訪れ、収録したDVDを手渡した。利用者は面会の機会が少なくなっており直接会うことができてうれしかったらしく「わざわざ来ていただいてありがとうございました」とお礼の言葉を述べた。利用者の皆さんはDVDを繰り返し上映し、おはやしに合わせて手拍子を打つなど楽しんでいる。

また、今年6月には田植えでの労をねぎらい豊作を祈る早苗振り豊作祈願を3年ぶりに実施することができた。

顧問の教師は「地域に誇れる民謡を若い世代に継承するため、去年夏には地元の中学校で教える活動もしました。高校生が主体となって見る人を喜ばせ、地域を盛り上げていきたい」と語る。

3年生で唄と司会を担当する渋谷桃花(ももか)さんは「友達に誘われて入部しました。先輩が優しかったし、新しいことをやってみたかった。楽器や踊りも頑張っている中、司会の役目として私たちが思っていることを伝えることができてうれしい。『大農は頑張っているね』と言っていただけるように工夫していきたい。大農はスポーツや吹奏楽も有名だが、『民謡はいいね』と言われると、やっていて良かったと思う」と話す。

同じ3年生の太田桃羽(ももは)さんは踊りを担当。中学生の時にイベントで見た郷土芸能部のステージに憧れた。「先輩と一緒に踊りたい」と思って入部した。「秋田おばこ節は滑らかな振り付けで爽やかに踊るのが好きです」と語る。目標は11月の県高等学校総合文化祭での優勝である。

(伊藤志郎)

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