~変わりゆく学校での飼育活動~

持続可能な動物飼育と動物介在教育の在り方
動物の内的状況探り、気付きを大切に
帝京科学大学生命環境学部特任教授の並木美砂子氏
メインテーマ「学校飼育動物への関心を高め理解を深めるために~変わりゆく学校での飼育活動~」と題して全国学校飼育動物研究大会(鳩貝太郎会長)がZoomによるオンライン形式で開催された。
並木美砂子・帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス科学特任教授は千葉市立動物公園で飼育活動と共に動物との触れ合いを担当していた経験を踏まえ、研究成果や今の学校動物飼育に必要なことを語った。
◇◇◇
モルモットが行動を起こしている時の精神的とか生理的とかの内的な状況を行動目録として記した。人間の目から見たことはもちろん、動物自身の内面で何が起きているのだろうという動物観察法がある。
モルモットを2頭以上飼っている場合、お互いに攻撃し合ったり、親和的に過ごしたり、親子の間なら舐(な)め合うという行動が社会的行動としてある。1頭だけの場合には、足を投げ出したり、おなかを下にして休息する、匂いを嗅ぐために後ろ足で立ち探索する、敵に対して攻撃・警戒をするための声を出す、興奮して跳び上がる、などの行動を起こす。
モルモットだと、肉食の動物や、空からタカやトビなどの猛禽(もうきん)類に襲われることがある。とにかく、何かの中に隠れるという本能的な行動、習性がある。隠れる場所が何もない場所で単独個体がいる場合は非常に不安を感じている。じっとして動かない状態というのが、この動物が身を守る、安全を確保するための手段になることもある。身構えて緊張している状態はあまり、精神的には良い状態ではない。
飼育することはケアの連続になる。立体的な行動にしてあげるとか、毛づくろいをできない時はブラッシングをしてあげるとか、動物の要求に合わせたケアが飼育する上では肝要になる。
動物がいるだけで教育になるということではない。介在教育の目的は①相手(動物)の立場に立てる、言語表現ができない動物の行動から内的状態を根拠を持って想像できる人材を育成する②動物福祉、動物の要求や状態を察知することを学ぶ場所を提供する――ことが重要。
動物の内的な状態とか要求をきちんと知る上では、動物福祉というものを学んでいくことが必要になる。個体ごとに合わせ、飼育する中で発見することが重要になる。世話を受けている動物の立場に立って感じたことを文字や絵にして提示することで、やってきたことに「自信を持つ」という学習効果につながる。指導する立場の人が子供たちをサポート中に、行動から見た動物の内的状態に深く接することが重要になってくる。小学1、2年生でも十分にできることだと思う。
内的状況に根拠を持って、想像できることが重要。「震えている、寒いのかな」「食欲が無いから~~なのかな?」と雰囲気、推測で科学的根拠を持たずに、世話することが多い。ここ20年くらい、内的状態と外的環境の研究、人間が感知できる行動カテゴリーを連携させるようになったのは、生理的指標を使うようになったからだ。
最初は動物の行動に絡んで喜んでいるのか、嫌がっているのか、怖がっているのか、それを分かってあげることが必要。その時だけを見るよりも、前後を含めて観察することで理解できることがある。人間の方を見ているのか、ずっと隠れ家に入ったままなのか、時間の流れ、見ているだけでは難しいので、ビデオを撮って時々見ているとか。どういう時に鳴き声を発するか、みんなで共有することも必要だ。
理科教育の中で研究者が現場教員にどのように噛(か)み砕いて伝えるか、「触れてみましょう」だと、触れることが目的になる。ただ「見ましょう」では見るだけになる。観点を決めて、食べ方を見る、その時に気付いたこと。カテゴリーがなくてもいい。「エッ!」と思ったこと、「アレッ!」と思ったこと、「ヒゲはあるのか」、どういう形に「ヒゲはなってるの?」と発問を持って語り合うこと。内的状況を学ぶことも多い。
言葉による介在について、教員でも指導・相談してくれる獣医師、生徒・学生でも良いが、寄り添いながら、「アッ!」と声を発した子供に対して、「何に気付いたの?」と声掛けし、「~~だったんだね!」と言葉でリアクションしてあげると、子供の自信にもなる。新しいことを見つけると褒めてあげること。そうすることで学ぶことに積極的になれる。次に起こると思われることを予測して対応することができる。科学の入り口に立つことができる。