トップ社会教育学校飼育動物への関心を高め理解を深めるために

学校飼育動物への関心を高め理解を深めるために

学校飼育動物への関心を高め理解を深めるために

メインテーマを「学校飼育動物への関心を高め理解を深めるために~変わりゆく学校での飼育活動~」と題して全国学校飼育動物研究大会(鳩貝太郎会長)がZoomによるオンライン形式で開催された。「生活科における動物飼育活動」と題して斎藤博伸・文部科学省初等中等教育局教科調査官が講演した。(太田和宏)

文科省初等中等教育局教科調査官の斎藤博伸氏

判断力・表現力等の育成を目指して

生活科における動物飼育活動

小学校の生活科で学ぶことを説明する。具体的な活動や体験を通して、身近な生活に関わる見方・考え方を生かし、自立し、生活を豊かにしていくための資質・能力を育成することを目指すということが生活科の第1の目標である。その中で①生活上必要な習慣や技能を身に付ける②考え表現することができるようにする。思考力、判断力、表現力等の基礎を築く③自ら働き掛け、意欲や自信を持って学んだり、生活を豊かにする――ことを挙げ、資質・能力を向上させることが生活科の役割になっている。

動物飼育に関して詳しく見ると、動物を飼ったり植物を育てたりする活動を通して、育つ場所、変化や成長の様子に関心を持って働き掛けることができ、それらは生命を持っていることや成長していることに気付くと共に、生き物への親しみを持ち、大切にしようとする心を育むことを目指している。

文部科学省において、学校における継続的な動物飼育・植物の栽培を行う意義は、長期にわたる飼育・栽培の過程で生き物への親しみ、生命の尊さを実感していくことではないか。前回の改定から自然事象に接する機会が乏しくなっていることや生命の尊さを実感する体験が少なくなっている児童たちの置かれた現状を踏まえ、継続的に飼育することで、親身になって世話ができるようになる。こうしたことが「自然離れの解消」「生命の尊さを体験的に学習する」意義と考えている。

そうは言っても、学校での動物飼育、動物の命を預かっていることで、さまざまな問題・配慮事項が起きる。飼育舎の管理、環境への配慮、休日や春休み、夏休みなどの長期の休業時、コロナ禍での休校時などの世話。新型コロナ、通常の風邪、インフルエンザなどの感染症対策、児童のアレルギー問題などへ配慮しながら、学校での動物飼育が求められている。

モルモットを題材にしてみると、単元目標(年間の学習計画)はモルモットを飼育する活動を通して、変化や成長の様子に関心を持って、動物個々に合った世話の仕方があることや生命を持っていること、成長していることに気付き、親しみを持ち、生き物を大切にすることができるようにする、というもの。活動(~を通して)、思考(~について考えることができる)、気付き(~に気付き、~が分かり)、態度(~したりしようとする)という資質・能力を高めていくことができる。子供たちがどんなふうに資質・能力を育んでいくのか、ということを期待しながら授業を組み立てていくことが必要だ。

小単元ごとに、知識・技能、思考・判断・表現、主体的に取り組む態度の3点に沿って評価基準を作成することになる。単元ごとにモルモットとの関わりが身近になっていき、親しみを持っていき、ある程度長いスパンを持って、それを表現できるようになっていくことを目指す。

評価基準の具体的な児童の姿と評価方法として、気付いたことを基に考えることができるようにするための多様な学習活動を設定する。モルモットの飼育を例として①餌の食べ具合を見て種類や量を調整している②様子を見ながら嫌がらないようになでたり、だっこする③気持ちよく過ごせるように世話をする④世話の過程で起きた問題の改善に向けて世話の仕方を変えている⑤世話の仕方を見直して、獣医、上級生に聞いたり、本で調べたりしている――。試行錯誤の分野では、きっとこうしたら、こうなるだろうと考えを巡らせ、思考が活性化しているかどうか。気付いたことを基にして、知識がだんだんと増えていく、しっかりすれば、考えることもしっかりしてくる。このように学校の授業では取り組んでいく。それによって、考える力が育っていく。

モルモットの様子をクラスの友達と伝え合ったり、なんとなく感じたもの、無自覚だったものが、自覚されていく。友達の考えと合わさることで、個別だったものが、関連してくる。モルモットのことを話してきたものが、やがて、自分自身のことも語り始める。

子供たちのやりとりを通して、教師側は、獣医師や動物園から聞いたこと、皆が発見したことを「言葉」として残していく。子供たちの学習活動がしっかりと、適切に行われるように、絵や文章で動物コーナーに掲示物を作成したり、板書を見直したり、ノートに記録したりする活動を行っていく。

豊かな「言語表現」を行うことができるようになり、体験と表現を繰り返し行うことで、自信を持ち、成長してくる。学習指導要領で掲げている学びに向かう力、生きて働く知識・技能の習得、思考力・判断力・表現力等の育成という目標に向かって小学校の授業が行われている。

「持続可能な動物飼育と動物介在教育の在り方」並木美砂子・帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス科学特任教授、「ホスティング方式での学校動物飼育」中島由佳・大手前大学現代社会学部教授の詳細は後日掲載。写真は同会のZoom画面から掲載。

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