トップ社会教育「恐竜王国」のブランド力向上へ

「恐竜王国」のブランド力向上へ

福井県立大、4年後に日本初の専門学部新設

福井県立恐竜博物館に展示されている実物大の恐竜骨格(写真上)と、同博物館・化石クリーニング室での作業風景

福井県立大学に恐竜学部(仮称)が新設されることになった。「恐竜」を冠した大学の学部は日本初だ。ちなみに、福井県は「恐竜王国」と呼ばれるほど、日本有数の恐竜化石の産地で、これまでの発掘実績や研究成果を生かし、令和8年4月の開学を目指している。恐竜に特化した学部設置は全国初で、地域のブランド力向上につなげる狙いもある。恐竜は子供たちに人気が高いだけに、今後の次世代への展開が楽しみだ。(日下一彦、写真も)

博物館に隣接、連携強化目指す

恐竜・古生物コースと地質・古環境コース

恐竜学部の新キャンパスは、勝山市にある県立恐竜博物館に隣接して学部棟を整備する計画で、同館との研究・教育の連携強化を目指している。定員は1学年30人で、恐竜・古生物コースと地質・古環境コースの2コースで構成する。

恐竜学や地質・古気候学などを学ぶ学部は全国初で、恐竜博物館との研究と教育の連携強化を図るという。教育方針を見ると、「恐竜博物館との一体的運営や有機的連携による相乗効果を発揮し、新たな観光や産業創出につながる『デジタル古生物学研究』、フィールドワークを主体とした教育カリキュラムなどを特色として打ち出す」としている。

キャンパスは博物館西側にある第3駐車場(敷地面積7500平方㍍)に、約27億5000万円を掛けて学部棟を整備して勝山キャンパスとし、1年生は永平寺キャンパスで一般教養科目を受講、2年生から勝山キャンパスに移る計画だ。学部棟は令和8年4月に供用を始める。

恐竜博物館と連携できるのが強みで、施設や研究機関の相互利用、研究員による授業、博物館の展示・保管技術を生かした教育などが検討されている。また、世界で活躍する研究者による学生指導や海外機関との共同研究も行い、国際感覚を養うことも目指している。さらにVR(仮想現実)やMR(複合現実)といった先端技術を駆使したデジタル古生物学研究も推進していく。

ちなみに恐竜について学ぶのは考古学ではなく古生物学で、学部では理学部や教育学部(理系)に当たり、学問の系統は地質学,地球科学、地球惑星科学などに組み込まれる。全国では東京大学の理学部地球惑星環境学科、北海道大学の理学部地球惑星科学科、静岡大学の理学部地球科学科地球科学コース、早稲田大学の教育学部理学科などが主なところで、数は少ない。現状では「恐竜を勉強する学部」と堂々と名乗っている大学は見当たらない。

福井県の恐竜化石は1989年から本格的な発掘調査が始まり、2000年に県立恐竜博物館が開館された。さらに古生物学の研究拠点として、13年に同大で恐竜学研究所がスタートした。コロナ前の令和元年には入館者数が90万人を超えたが、ここ2年はコロナ禍で半数以下に落ち込んでいる。

恐竜化石の発掘調査と共に、福井県の地質・古環境研究には目を見張るものがある。それが県西部の若狭町にある水月湖の湖底から掘り出された堆積物の年縞(ねんこう)だ。バーコードのような縞(しま)模様に連続し、そこに7万年分の地球の歴史が刻まれているという。同学部の研究には、年縞も含まれている。この他、観光名所の東尋坊に見られる「柱状節理」も、その生成の形状を調査すると、当時の環境を知る上で貴重な資料となっている。

新学部開設の意義について、杉本達治知事は定例会見で「恐竜の研究は地球環境を考える上で重要な要素。日本にここにしかなく、いろいろな人が目指してくる」と意義を強調している。

想定される就職先として、県は▽政策立案・教育・研究分野(研究者、学芸員、教員)▽デジタル関連分野(IT関連産業、土質力学・道路測量に関する地質系のデジタル関連産業)▽観光関連分野(ジオパークなど自然関連の観光業、出版業、報道関係)▽地質関連分野(地質・土木・建築系コンサルタント、土木系公務員、ゼネコンなど建設産業)を挙げ、幅広い企業からの誘いを期待している。

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