トップ社会教育「都市養蜂」で明るい未来づくり 千葉商科大学の学生が地元とコラボ

「都市養蜂」で明るい未来づくり 千葉商科大学の学生が地元とコラボ

人間と自然の共生・融和目指す

ミツバチの集めた蜜を集める学生たち=千葉商科大学提供

人間社会と自然の共生などを目的に、千葉商科大学(千葉県市川市国府台)の学生が学内で養蜂事業「国府台 bee Garden」に取り組んでいる。学生たちは当初、巣箱一つに1万匹のセイヨウミツバチを飼育し、4月上旬までに全部で5箱の巣箱を設置。地元店舗などとコラボ商品を開発したり、地域住民との交流・体験会などの企画を進めている。(石井孝秀)

地産地消促進へ地域店と協力 ハチミツレシピなどの開発も

千葉商科大学のある市川市は人口約50万人、県内では4番目の人口数を誇る都市だ。地方でなく都市圏での養蜂は意外なようだが、実は近年、ミツバチを都会で飼育する「都市養蜂」が注目されており、海外でもパリやニューヨークといった大都市でも行われている。メリットとして、公園などの緑地の存在や耕作地での農薬使用が少ない点が養蜂に適しているという。

同大学でミツバチを放つ「放蜂式」が行われたのは、まだ桜の花が咲き誇る3月28日だった。防護服に身を包んだ千葉商科大学の原科幸彦学長らの手によって解き放たれたミツバチたちは、目まぐるしく巣箱を出入りしていた。

商品化されたハチミツをPRする学生たち=5月26日午後、千葉県市川市の千葉商科大学(石井孝秀撮影)

学生たちに養蜂指導を行っているのは、銀座や丸の内のビルなどで養蜂に取り組む「銀座ミツバチプロジェクト」(東京都中央区)の田中淳夫副理事長。放蜂式の場では「ミツバチは集団で生きることでコミュニケーションを取っている。この大学でミツバチのプロジェクトが始まったことで、周囲の木々の受粉だけでなく、さまざまな人と人とがつながっていくだろう」(田中副理事長)とエールを送った。

ミツバチたちの世話をするのは、同学のCUC100ワイン・プロジェクトのメンバーたち。同プロジェクトは、ぶどう栽培やワイン造りを通じて、農業の未来やエネルギー資源を考え、さらに地域交流の場を作ることを目的とした取り組みだ。

このプロジェクトが養蜂事業に取り組みはじめた理由について、学生統括である3年生の小西俊太郎さんは「ワイン造りの中で、地球環境の変化でミツバチが突然姿を消すという状況を知り、養蜂事業を始めた。賛同してくれた学校や団体、個人の方にも私たちの思いや養蜂を行う楽しさを伝えたい」と語った。

週2回の作業の中で、ミツバチに腕や頭を刺されたり、女王バチがいなくなるなど、苦労の連続だった。そのような中で、4月22日に初めての採蜜(ハチミツの採取)作業を実施。その約3週間後の5月12日にも作業が行われ、2日間の合計で計69㌔のハチミツを採ることができ、メンバーで感動を分かち合った。

同プロジェクトの養蜂局長で、3年生の浅見乃絵さんも「なかなか理解してもらいづらいけれども、お世話する中でハチがかわいく見えてきた」と笑顔を浮かべる。

春の国府台を飛び回ったミツバチたちのハチミツは、学生たちがデザインした瓶に詰められて販売中だ(100㌘、800円)。4月期は桜の香りが漂う濃厚な甘さが自慢で、事業法人CUCサポートより販売されており、オンラインでの購入だけでなく道の駅など地域の店舗でも販売予定だ。

また学生たちは、地産地消を促すため、ハチミツを利用したレシピの企画・開発にも着手。市内の店舗にも協力を仰ぎ、欧風創作料理店ではスペアリブ料理、創作洋菓子店ではタルトなど工夫を凝らし、5月末に行われた商品発表会では料理の試食会も行われた。ハチミツの採取時期は8月までだが、今年の目標としてハチミツ200㌔が採取目標。さらに今後、障害者の作業場との連携や子供たちを招いた養蜂見学会などの企画も進めている。

原科学長は「(同学では)学長プロジェクトとして、『安全・安心な都市・地域づくり』『環境・エネルギー』などを掲げてきた。ハチミツは、まさに都市で作り出される農産物であり、資源だ。都市の中の緑を守りつつ、明るい未来をつくっていこう」と語った。

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