トップ社会教育五城目町の魅力、新聞で伝える 小学校の統廃合を機に

五城目町の魅力、新聞で伝える 小学校の統廃合を機に

秋田公立美術大学附属高等学院の卒業生8人

製作した新聞を手にする秋田公立美術大学附属高等学院の卒業生8人(同学院提供)

全国各地で人口減少に伴って、小中学校の統廃合が進んでいる。秋田市に隣接する五城目町(ごじょうめまち)でも七つの小学校が統廃合された。高等専修学校の秋田公立美術大学附属高等学院(秋田市新屋〈あらや〉)では、令和3年度の卒業生(定員30人)のうちデザイン科ビジュアルデザインコースの8人が、課題授業の一環として同町の新聞(A2ブランケット版)を製作。住民へのインタビューや取材を実施、手書きの新聞(4㌻、黒と黄の2色刷り)を製作した。生徒の一人は「圧倒的な自然を前に、心を奪われた」と記している。町役場では4月に新聞を町の広報紙に挟み全戸に配布した。(伊藤志郎)

「圧倒的な自然に心奪われた」

製作したのは、同校デザイン科ビジュアルデザインコースの3年生8人。同コースでは「五城目のデザイン|五城目町民の夢のビジュアル化」という課題で平成30年度から卒業制作を行い、B1サイズのポスターを作ってきた。

4年目となった今年度は特に、令和3年1月に七つの小学校が五城目小学校として統廃合したことから、「閉校した小学校の地区の人はどのような思いを持っているか?」をテーマに、廃校となった校区のうち4地域を面ごとに紹介している。

フロントページは地域の一つ、馬場目地区について。廃校舎を利用したテナント施設「BABAME BASE」(五城目町地域活性化センター)にさまざまな企業が参入していることを紹介。その中で、「予約制かつ出張美容」の「いちご美容室」を平成28年に出店した石井智美さんにインタビュー。笑顔の石井さんは「運転免許を返納した人や体調が悪くないと出張してもらえない、と思っている人にもっと出張美容を利用してほしい」と語る。他に五城目朝市、野鳥の森公園を取り上げた。

2面は大川地区。27年に廃校となった大川小学校は現在、就労継続支援B型事業施設「やまどり」に。五城目小学校に統合が決まった心境を町民に聞いたところ「親として、より過ごしやすい環境になったことへの安心感が大きいが、やはり寂しい気持ちもある。しかし、自分たちの中ではずっと思い出として残り続けている」と前向きな言葉を聞くことができた。

元保育士で現在は主婦の島崎晴美さんにインタビュー。旧大川小学校の時計台の鐘、大福寺本堂と菅原神社、月1回の近所交流会を取り上げている。「編集後記」で「美術を通して地域とつながる良い経験ができました」と感謝の言葉をつづった。

3面は杉沢地区。閉校した小中学校は「杉沢交流センター友愛館」に。施設管理者の石川交三さんは、今は住民交流の場だが「宿泊施設にする」のが夢という。

取材した生徒は、高さ約6㍍の大絶景ネコバリ岩を見て「人の背丈を優に超える大きさの岩と、そこから伸びる大木たちが天に向かって伸びている姿は、自然界の強さを感じることができ、圧巻だった」と記している。

そして最終面・内川地区のトップ記事は「内川ささら存続の危機、復活を願って」。大正時代から続く郷土芸能の「内川ささら保存会」は25年を最後に活動を休止。同会の澤田石清樹さんは「まず母体である内川地区をしっかりして、理解を得ていかなければ」と語る。

担当した生徒は「取材後記」で、初めて内川地区を訪れた時は「知らない土地に足を踏み入れる緊張感があった。しかし、取材を通して地区の地域資源や伝統芸能に触れ、次第に内川地区に惹かれていった」「実際に訪れてみないと分からない地区の良さや、美しい光景があるのだと実感した」「これから内川地区に多くの若者たちが訪れ、私と同じように魅力に気づいてくれる人が増えてほしい」と締めくくっている。

生徒を指導したビダイフデザインラボ担当の澤田弦吾講師は、「新聞は約1カ月で作りました。専門家の意見を踏まえ、題字や段組、文字の大きさ、四コマ漫画、広告を各面に入れています。見出しと文字はあえて手書きとし、みんなに楽しんで作ろうと言いました」と振り返る。

同コースの生徒は2年次に、学校のある新屋地区でB2サイズのポスターを作成。インタビューのアポイントを取る段階から生徒に任せており、それが3年次の課題授業に生かされた。また課題を解決する市町村のポスターや、秋田県警からの依頼で防犯ポスターも作っている。

秋田公立美術大学附属高等学院

昭和27年に秋田市立工芸学校として創立。学校の形と名称を変えながら発展。現在は、平成25年に開学した秋田公立美術大学付属の高等専修学校。現校長の大八木敦彦氏は英文学、比較文学、現代詩、文芸を専門にする。秋田公立美術工芸短期大学助教授、秋田公立美術大学准教授、教授を経て令和2年から現職。1学年30人で2科4コース一括募集。工芸美術科・木材工芸コースと金属工芸コース。デザイン科・インテリアデザインコースとビジュアルデザインコース。入学後1学年の基礎学習を終えてから、それぞれの興味・適性により、各学科・各コースに進む。大学入学に際し、高校卒業と同等の学力と認める「大学入学資格付与指定校」になっている。

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