清算中も「早く戻りたい」
世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の宗教法人解散が確定し、信者を悩ませているのは信仰をささげる「場所」だ。信者の自宅で集会を開いたり、オンラインで礼拝を配信している所も多いが、愛着ある施設が使用不可となったことで精神的苦痛を抱く人も出てきている。一方で、賃貸物件だった教会では宗教活動を再開したケースも出てきた。全国に先駆けて7月1日、信者の手に戻った神奈川県藤沢市にある宗教団体・家庭連合の藤沢家庭教会を訪れた。(石井孝秀)

藤沢家庭教会はJR藤沢駅から歩いて5分の場所にある。7階建てのビルのうち、もともとは1階と3階を除くフロアが教会として使用されていたが、7月1日からは5階から7階のみを借り、教会施設として利用しているという。
責任者である佐々木耕三郎さんは、もともと2世信者の教育担当という経歴が長く、この教会に「教会長」として着任したのは、なんと東京高裁で解散命令の決定が出された3月4日だった。
着任のあいさつも早々に済ませ、報道を見てスタッフと今後のことを会議していると、午後2時ごろ清算人の代理人弁護士2人が教会にやってきた。
佐々木さんは「心境としては複雑だったが、感情をぶつけても意味はない。むしろ、教会施設が賃貸物件のため、清算人の業務が終了すれば教会施設を再び使えるようになるかもしれないと考えた。一日でも早く終わらせて、次の段階へ向かおう」と固く決意したという。現金や通帳、鍵などすべて清算人に提出した後は、主に総務や会計の担当者が清算業務に携わることになった。
宗教法人だった教会の資産確保が清算人の最優先事項だったため、信者の出入りは不可能になった。佐々木さんは行き場のない信者のため、外部の会場を借りて集会を開くようになった。

「逆風の中でも、ありがたいことに多くの信者たちが足を運んでくれた」。佐々木さんは感謝の言葉を口にする。毎回、会場に来ることのできない信者のため、2世信者の力を借りながら配信用の機材も運び込んだ。
さらに信者間で自発的に互いの家庭を訪問して声を掛け合うなど、信者同士で一丸となる姿に支えられたと佐々木さんは話す。ただ、教会施設と異なり、外部会場では予定時間が近づけば、すぐ撤収しなければならず、「寂しさを感じた。教会は礼拝が終わってもみんなで交流できていたからだ。信者たちも同じ思いだっただろう」と話す。
幾つかの会場で定期的に集会を開いたが、中には集合場所を間違えてしまう信者もいて、不便さは付きまとった。佐々木さんと信者らは「一日でも早く教会に戻りたいという一心」で、祈りを捧げられる場所のない期間を駆け抜けた。
7月1日、清算人側の「早く業務を済ませたい」という意向もあり、もともと教会施設にあった備品を購入するという形で、以前とほぼそのままの状態で引き継ぐことができた。教会員らが物件のオーナーと、これまで築いた信頼関係の上で「そのまま使ってほしい」との了承を得ることができたのも大きかった。
閉鎖された家庭連合の教会の中でも、かなり早い段階で教会施設への復帰を果たした。佐々木さんは「多くの信者は『もう二度と使えない』と思っていた場所に戻ることができ、本当に喜んでいた」と振り返る。
解散の報道にショックを受け、これまで集会から足が遠のいていた信者もいたが、教会施設が戻ってきたことでまた顔を出す信者も出てきたという。ある2世信者(20代男性)は「外部の会場と全然雰囲気が違う。子供連れだと参加しづらかったが、教会施設だと行きやすい」と話した。
しかし、佐々木さんは「それでもまだ傷の癒えない人たちもいる。だからこそ改めて、より居心地の良い教会にできるよう改革していかなければ」と強調した。さらに、「全国を見れば、戻る見込みのない教会もある。藤沢の教会はたまたまラッキーだっただけ。これからが本番だ」と率直な気持ちを訴えた。







