宗教団体世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)が、宗教法人解散決定に伴う清算手続きが開始された3月4日以降に信者が受けた被害についてアンケート調査を行い、9割近い信者が精神的苦痛を訴えていることが分かった。原因の多くは教会を使えないためだ。文部科学省が決定した「指定宗教法人の清算に係る指針」は信教の自由への配慮を明記している一方、これに清算手続きが矛盾する実態が浮かび上がった。(信教の自由取材班)

清算で礼拝など施設利用認めず
異様な犯罪者扱い
東京高等裁判所で同日午前11時に解散決定が出されて間もなく、全国の家庭連合施設に清算人および清算人代理人が訪れた。一部の教会にはパトカーが乗り付け、警察権を行使するかのような光景もあった。テレビカメラを抱えたマスコミ各社が集まり、あたかも教会内の信者が事件を起こした犯人として逮捕されるかのような悪者扱いの印象を誘うもので、ショックを受けた信者は少なくないという。
同決定から宗教法人が清算法人に移行し、教会施設に信者の立ち入りはできなくなり、職員の多くは解雇され、一部が清算手続きに必要とされて清算法人職員となった。

最大の懸念は孤立
一方、多くの信者を擁する教団は7月に宗教団体として家庭連合を維持し、会長に宗教法人当時の会長であった堀正一氏が就任。同15日から3月4日の清算手続き開始以降に信者が受けた被害を調査する「全信徒被害者アンケート」を進めた。
8月12日時点の集計では、1万594件の回答のうち86・6%が精神的苦痛を訴えている。
内訳は、「非常に強く感じている」14・1%(1492件)、「強く感じている」23・0%(2437件)、「ある程度感じている」32・2%(3408件)、「少し感じている」17・3%(1830件)だった。これら精神的苦痛を訴えた回答のうち心療内科を受診したという回答は288件だった。
さらに「体調面への影響」を訴える回答が3093件あり、このうち病院を受診したという回答は451件だったという。
教団広報渉外局は同アンケートへの回答を信者らに呼び掛けるのと並行して、7月22日から定期的にユーチューブを通じてアンケートの集計状況を公表している。その中で、精神的苦痛を訴える信者から「心の拠り所であった教会を奪われて生きる気力を失い、家から出ることもできなくなった」「夜眠れない日が続いた」などのほか、両親と共に教会に通っていた子供の中には警官が踏み込んでくるのではないかと、小さな物音にも敏感になって怖がる事例などが寄せられていると報告した。
宗教に入信する人はもともと心の弱さや悩みを抱えている場合が多く、家庭連合も例外ではないという。その宗教の教えや人との交流の中に「救い」を感じていた場所が、突然なくなったショックと心痛は想像に難くない。
例えば昨年6月の本紙連載「信者の拠り所はどこへ」で証言した当時の東京・杉並家庭教会の教会長は、「教会がなくなることは、礼拝の場所がなくなるだけといった単純な問題ではない」と指摘した。「最も大きいのは教会施設で形成されたコミュニティーが失われることだ」と述べ、とりわけ懸念していたのは家庭の中で一人だけ信者でいる人の家族からの反対と孤立だ。また、同教会には高齢の信者が多く、配偶者と死別している信者の中に「孤独死が増加するのではないか」と危惧していた。
信教の自由への配慮なき清算人
指針の内容を反故
昨年10月20日、家庭連合への宗教法人解散決定と清算を予想した文部科学省は「指定宗教法人の清算に係る指針」を決定した。指針では、清算業務に支障のない範囲での信教の自由への配慮をすることも明記された。「清算人は、清算法人の財産の管理、処分にあたっては、清算事務に支障のない範囲で、その必要性の程度等も考慮して信者らに施設の利用を許諾する等、現に存在する宗教団体の信者らの信教の自由に配慮をすることが望まれる」などがそれだ。
その「配慮」について施設での礼拝を求める信者の声は多い。東京西バプテスト教会の黒瀬博牧師は、本紙への寄稿の中で「清算人は宗教団体の信教の自由を侵害しないように清算手続きを進めることは当然のことです。現在、清算人は家庭連合の礼拝所をすべて差し押さえていますが、礼拝所は宗教活動に必須なものですから、ただちに家庭連合に返還しなければなりません」と述べた。
これまで清算人は、教団から800億円を超える資産を差し押さえたと発表した。――十分過ぎるのではないか? 清算人および清算人を監督する裁判所が、「指針」で「清算事務に支障のない範囲で、その施設の利用を認めることもできる」と許容している内容を、あえて実行しないのは偏向した対応であり人権上の問題だ。指針の文面を清算手続きの運用で反故(ほご)にしようとするのは信教の自由への侵害行為であり、慎むべきだ。







