トップ社会「暑さ」が子供の運動不足に拍車、体を動かしたくなる環境づくりを

「暑さ」が子供の運動不足に拍車、体を動かしたくなる環境づくりを

 今年も日本列島は厳しい暑さに見舞われている。子供が体を動かさない原因の一つに「暑さ」があることが調査で明らかになった。約7割から8割の子供が世界保健機関(WHO)が推奨する活動の基準を満たしておらず、運動不足が深刻な社会課題となっている。(豊田 剛)

気候変動時代における子供の身体活動と遊びに関する調査結果を発表する日本体育大学の城所哲宏准教授(右)=3日、東京都港区
気候変動時代における子供の身体活動と遊びに関する調査結果を発表する日本体育大学の城所哲宏准教授(右)=3日、東京都港区

 学校では最近、暑さのため体育やスポーツ活動を制限するようになった。また、夏の全国高校野球選手権(甲子園)では、昨年の大会から開会式を夕方に実施したり、試合を朝と夕方の2部制にして日中の時間を避けたりしている。猛暑の影響が子供のスポーツ活動に及んでいる。

 日本のスポーツ施策の基本となる「スポーツ基本法」が2025年6月、改正され、気候変動への対応が初めて明記された。「スポーツ事故の防止等」に関する項目に、国および地方公共団体は「気候の変動への対応に特に留意しなければならない」という文言が追加された。

笹川スポーツ財団が調査

 こうした中、公益財団法人笹川スポーツ財団は日本体育大学の城所哲宏准教授と合同で気候変動と身体活動の関係を調べた。日本の子供を対象として身体活動の季節変動を横断的に示した初めての調査である。全国の小学生2605人の保護者を対象に、2025年9月、11月、26年2月の3回にわたり同一の児童の活動を追跡。季節による変化を明らかにした。

 その結果、季節を問わず、全体の7割から8割の小学生が、WHOが推奨する1日当たり60分以上という身体活動量に達していないことが分かった。

7~8割が慢性的運動不足

 WHOのガイドラインでは、直近7日間で1日合計60分の身体活動を5日以上行った場合、「達成」と見なす。スポーツだけではなく、登下校や休み時間の遊びも身体活動に含まれる。

 調査の結果、すべての回で未達成率は72~80%だった。すべての回で達成した男子は6.6%、すべて未達成は59.4%。女子の場合、全て達成は4.9%、未達成は62.6%であり、男子と比べて運動不足であることが明らかになった。

 運動をしない理由について尋ねた項目(複数回答)では、季節を問わず、「特に理由はない」「他にしたいことがあるから」「時間がないから」が上位を占めた。ただ、9月の1回目調査に限っては「暑いから」が最大の理由に挙げられた。また、女子では2月の調査で「寒いから」が3番目に多かった。

 城所氏は「身体活動をしない人は、季節を問わず活動しない。そもそも優先事項になっていない」と指摘。暑さによって子供の身体活動がどれほど減るのかについては、7~8月のデータが取れていないこともあり、気候のせいだと断言するには時期尚早と説明した。

 英医学誌ランセットの研究によると、運動をしないことで世界で年間47万~70万人の死者が増えると予想される。また、生産性の低下により、年間最大5900億円規模の経済的コストが生じると試算されている。運動習慣の欠如は、将来の健康や社会経済にまで大きな影を落とす深刻で世界的な課題となっている。

 日本では、予防可能な死因の中で、運動不足による死亡者数が、喫煙、高血圧に次いで3番目に多い。年間5万2000人に達している。テクノロジーの進化によって生活が便利になったことに加えて、暑さが原因で人はますます動かなくなっているのが現状だ。

 今後の対策として、城所氏は、エアコンの整備など季節に応じた対策のみに頼るのではなく、運動・スポーツの視点を超えて体を動かしたくなる環境をつくっていくことが大切だと指摘した。

 日本の学校のグラウンドには木陰が乏しく、休み時間になっても暑くて外に出られない。ドイツを例に挙げ、学校環境を森化すべきと提案した。その上で、「地域、家庭環境も変えていくことが大事で、子供の多忙化、遊ぶ時間がなくなっている社会の在り方を変えないと難しい」と述べた。

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