
安倍氏の足跡振り返る回顧展ー東京・有明
2022年7月8日、選挙演説中に銃撃によって暗殺された安倍晋三元首相の足跡や人柄を、遺品やインタビューなどを通じて振り返る「安倍晋三 回顧展」(主催・安倍晋三デジタルミュージアムプロジェクト)が4日、東京・有明の東京ビッグサイトTFTホール500で始まった。歴代最長政権を担った安倍氏の業績がパネルや映像で紹介され、会場を回る人の中には感極まり、思わず目頭を押さえる姿も見られた。(石井孝秀)

来場者の注目を集めた展示の一つは、再現された議員会館の執務室。実際に使用していた執務机や椅子が用意され、その傍らには安倍氏が生前に揮毫(きごう)し、松陰神社(山口県)に奉納された「至誠」の書も飾られた。会場に詰め掛けた多くの来場者は、安倍氏が座っていた椅子に腰掛け、記念撮影をしたり、感慨にふけっていた。
この他、小学生時代の日記やトランプ米大統領のサインが記されたゴルフキャップ、演説を繰り返し練習していたテープレコーダー、地元山口県の支援者からのメッセージなども展示。安倍氏の人生を追体験しつつ、国内外の人々から愛され、慕われたことが見えてくる展示構成となっている。

事件当日、最期の演説で身に着けていた衆議院議員記章や拉致被害者の救出を願うブルーリボンバッジ、履いていた革靴などの展示も、多くの注目を集めた。靴を覗(のぞ)き込んだ来場者の一人は「かなり履きつぶしているね」とつぶやいていた。演説に使用していたマイクも展示されていた。愛用のマイクだったという。展示の図録によると、安倍昭恵夫人は「政治家は話すのが仕事です。主人にとってはマイクがある意味で武器でした。武士にとっての刀を握りしめたまま、亡くなりました」と話しているという。

「主人がたくさんの種をまいてくれた」昭恵夫人
昭恵さんも回顧展の会場を訪れ、事件当時のことを振り返った。「撃たれた」という知らせを聞いた時も「まさか亡くなるとは思っていなかった」という。病院に着くと安倍氏は意識もないほぼ即死の状態だったが「私が声を掛けると、ちょっとだけ握った手を握り返してくれたような気がした。錯覚かもしれないが、私が来るのを待っててくれたのかなと思った」と涙ぐみながら話した。その上で「日本に生まれてよかったと日本人が思えるような日本を造っていきたい。主人がたくさんの種をまいてくれたので、その種を花咲かせるため、私も水をやったり肥料をまいたりしていければ」と訴えた。

会場でスピーチを行った文藝評論家の小川榮太郎氏は安倍氏について「歴史を経済やシステムで説明しようとする歴史書は多く、人間は誰でもいいという見方も出てくるが、決してそうではない。政治指導者の個人として器、知恵、逆に愚かであれば、大きく歴史を変えてしまう。安倍さんは歴史的な賢者として、難しい時代の秩序を守り抜いた方」と評した。
また、「こんな形で追悼することになるとは。岸信介さんや安倍晋太郎さんたちも、まさか孫、息子が暗殺されるとは思ってなかっただろう」と安倍氏の早過ぎる死を惜しみつつ、回顧展の実施に取り組んだスタッフに、多くの若い世代がいた点を強調。その上で「安倍さんがこの若者たちに託した思いの息吹を感じてもらいたい」と語った。
「功績の大きさを実感」高市首相
高市早苗首相も回顧展にメッセージを寄せた。安倍氏について「日本国と日本人のために残してくださったご功績の大きさを実感する日々」と言及。さらに回顧展を通じて「安倍総理が何を願い、日本のどんな次なる時代を切り開こうとしていたのか、そして、残された私たちに何ができるのか」を考えてほしいと呼び掛けた。
当日券は一般2800円、学生2200円。東京では12日まで。17日から19日までは奈良県コンベンションセンターで開催される。
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