トップ社会【寄稿】東京西バプテスト教会牧師 黒瀬 博(中)説得力ない主観的「推認」

【寄稿】東京西バプテスト教会牧師 黒瀬 博(中)説得力ない主観的「推認」

家庭連合の解散 高裁決定

東京西バプテスト教会牧師 黒瀬 博氏
東京西バプテスト教会牧師 黒瀬 博氏

 「月刊Hanada」2026年6月号に載った弁護士・元衆議院議員の山尾志桜里氏と文藝評論家・一般社団法人日本平和学研究所理事長の小川榮太郎氏との対談「激突大闘論シリーズ4 旧統一教会解散 何が裁かれたのか」で述べられた山尾氏の論旨の根拠が東京高等裁判所の決定によるところが大きいので、ここで高裁決定そのものも批判する。

 まず高裁決定は世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の献金体質が問題だとしている。その証拠として、教祖の献金要請、海外送金、多額の献金目標、そして、かつての違法な献金集めをやめるとしたコンプライアンス宣言後も、同額の献金を集めていることは違法な献金集めが続いていると推認している。また、「社会通念上」、「不法行為が行われるおそれがある」など、刑事上の法律用語ではない概念を使い、最後には「解散命令もやむを得ない」と結論付けている。

 宗教法人法81条には解散命令の根拠は「法令違反」と書かれている。高裁決定では、どの法令に違反しているかは書かれていないが、当然のこととして民法709条違反ということだろう。では、教祖の献金要請はどの民法上の不法行為なのだろうか。言葉遣いは問題だったかもしれないが、法律違反ではない。また、高裁決定でもそれが違法行為であるとは明言していない。しかし、文脈ではそれが最後の解散命令の根拠のような構造になっている。また、海外への送金が問題であるとしているが、それは別途法律で規制することであって、現行法では法律の枠内の行為だ。高裁決定もそれが違法であるとは認定していない。しかし、これも高裁決定の中では解散命令の根拠であるかのような文脈に置かれている。

 教団の言動により信徒が違法な献金集めをしたことの責任は教団にあるとしている。それがコンプライアンス宣言前のことであることも裁判所は認めている。しかし、それも10年以上前のことであるから、それが今回の決定の根拠とされているわけではない。高裁決定の根拠は、コンプライアンス宣言後も教団が以前と同様の体質を持っていて何ら反省していないことにあるとしている。その証拠として、コンプライアンス宣言前に集めたのと同額の献金をコンプライアンス宣言後も集めていることを挙げている。それはコンプライアンス宣言前と同様の不法行為が行われていることを強く推認させるとしている。

 しかし、ここで使われている単語が「推認」とか「おそれがある」であることを見ても分かるように、主観的推論に基づく決定であることは明白だ。違法性を認定するなら、教団が現在集めている献金がどのような違法行為によって集められたものかを指摘しなければならない。また、裁判所は捜査や違法証拠収集をチェックする権限を持っているのだから、解散命令決定を出す以上、どこに違法性があるかを十分に指摘できる材料を持っているはずだ。ところがその違法な実例を一つも挙げないのは、挙げられなかったからではないのか。それでやむを得ず、献金総額を根拠にしたものと思われる。しかし、献金そのものは合法的なものだから、その一部に違法なものが含まれていると推認するという論理はあまりにも説得力がない。このような主観的決定が正しいかどうかは今後の歴史が審判することになるだろう。

 また、この決定の矛盾は、たとえ解散命令により法人格は失われても宗教活動は継続しているわけで、献金や韓国への送金は、いつでも再開できる状況にあることに変わりないことだ。高裁決定はそれらを禁止したわけではなく、また禁止する効力も持っていない。このため高裁決定で挙げた問題点が解決されずに残ってしまう。問題を解決しない決定を出すのではなく、もう少し解決するための方向性を示すことが可能だったのではないか。

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