5月20日朝、広島県廿日市市・宮島の弥山山頂近くにある真言宗大聖院の「不消霊火堂(きえずのれいかどう)」が全焼した。弘法大師・空海が1200年以上前に修行した際の火が燃え続けると伝わる聖地で、広島・平和公園の「平和の灯」の種火ともゆかりが深い。幸い「消えずの火」の種火は別の場所に保管されており無事だったが、建物は原型をとどめなかった。
今年に入ってから、須賀神社(福岡県)、法蓮寺と宝塔寺(愛媛県)、正琳寺(山口県)、大法寺と蓮照寺(富山県)、宇流冨志禰(うるふしね)神社(三重県)、古町愛宕(ふるまちあたご)神社(新潟県)、そして今回の宮島・不消霊火堂と、由緒ある神社仏閣の火災が9件も立て続けに起きている。
消防庁の統計によると、神社・寺院の火災件数自体は近年おおむね年間60件前後で推移している。統計上「急増」とまでは言えないが、貴重な文化財の喪失が地域の記憶と歴史の一部を永久に消してしまっている。
宇流冨志禰神社は創建1000年以上とされ、古町愛宕神社は1700年代前半に建てられた新潟市の有形文化財だった。本殿と拝殿は「ほとんど原形をとどめないほど」焼け落ちたと地元メディアは伝えた。木造の宗教建築はいったん失われてしまえば、同じものは二度と戻らない。
宇流冨志禰神社の宮司(75)は火災翌日、地元メディアに「本殿には電気も通っておらず、火の気はない」と語った。出火原因は現在も捜査中だ。火の気のない場所で火災が起きていることからさまざまな憶測を呼んでいるが、、浮かび上がるのは管理体制の脆弱さだ。
こうした背景には、全国で進む宗教施設の「無人化」「兼務化」という現実がある。担い手の減少と財政難により、夜間の見回りや防犯カメラ、自動消火装置の設置が難しい寺社は少なくない。加えて、ろうそくや線香など日常的に火を扱う環境や、山間部や離島という消防車が届きにくい立地といった悪条件も重なる。宮島の霊火堂は、まさにこれらの悪条件が重なる場所にあった。
消えない火を守るための建物が消えた。歴史的価値のある日本の貴重な文化財をこれ以上失わないために何ができるのか、関係各所には早急な対応策の実施が求められる。(報道部)





