

清算手続きが始まった世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)は3月9日、東京高等裁判所の解散命令決定を不服として最高裁判所に特別抗告し、同25日に特別抗告理由書を提出した。主に民法の不法行為を解散事由に入れたことや非公開の非訟事件として扱った手続きなどは憲法違反だと主張する。
また、教団が2009年に行ったコンプライアンス宣言以降、教団信者らの「不法行為」について具体的な行為や事実は特定・認定していないと指摘。それにもかかわらず、同宣言後も「不法行為に該当する不相当献金勧誘行為を継続して行った」と事実認定し、解散命令を出したのは「裁判の基本構造から外れる重大な内容」であるとして、公正な裁判を受ける権利に違反すると訴えた。
高裁決定に対して、深刻な憂慮や危機感を抱いた著名人からも最高裁に意見書が提出されている。憲法学者の小林節慶応大学名誉教授は、信教の自由という「優越的人権」に関わる事例だと指摘した上で、「その規制は、『明白かつ現在の危険』がある場合に限り、かつ、『より弾圧的でない手段』を選択すべき場合である」と強調。教団の解散が信者に与える支障を「間接的で事実上のもの」と切り捨ててはならず、非公開裁判で良いとする説明は「こじつけ」と批判した。
教団代理人の福本修也弁護士は自身の事務所ホームページを通じ、「仮定と推測をもって『不当寄附勧誘防止法の措置では効果がなく、家庭連合には解散命令が必要不可欠だ』と強弁する高裁の論理は、完全に破綻している」と主張。最高裁には「世間の空気に流されることなく、冷静なる態度をもって『正論』を真正面から受け止め、熟慮の末に賢明なる判断を下されることを期待する」と呼び掛けている。
特別抗告に一縷(いちる)の望みを託して、信者らは清算人管理下の教団施設に立ち入りできない不遇の時を過ごしている。その中で信者の墓がある三重県鈴鹿市の「峯ヶ城霊園(中日本霊園)」で11日、500人を超える信者らが墓参りに訪れた。中日本遺族会の企画した「合同墓参り」のイベントだった。
同会によると、毎年この時期には「中日本聖和祝祭」という教団の合同慰霊祭が開かれていた。代わりとなるイベントとして、清算人から出された方針を踏まえ、教団でなく遺族会の主催で開催した。
当初、参加人数は多くても200人程度という見込みだったが、ふたを開けてみると参加者は予想を大きく上回る500人超。同会の中林次郎代表は「とにかく来て良かったと喜んでもらいたかった。お弁当や豚汁、アイスなど聖和祝祭以上のおもてなしを心掛けた」と語る。
3月4日の東京高裁による解散命令維持の決定の影響もあってか、「墓参りだけでなく、久しぶりに会う人たちとの交流を楽しみに来てくれている人が多いなと感じる」と感想を述べた。
参加者の一人で中部地方在住の30代女性は、同霊園の存続に不安を感じる思いもあってイベントに参加した。今回無事に墓参りができ「霊園が清算対象になる心配は乗り切れたのではないか」と安堵(あんど)しているという。ただ一方で、マスコミにおける家庭連合反対派の発言力の強さを考えた時に「何かまた起きた場合、お墓は大丈夫なのだろうかという心配はまた出てくると思う」と不安を口にした。
信仰や信者同士の交流の場などを失った信者たちの精神的な苦悩は計り知れない。その状態からさらに霊園まで失う可能性を考えるのは耐え難い苦痛だ。教会の礼拝堂にも入れない信者らが集えた教団関係の場所は今のところ墓地だけだ。信者たちは「信仰の寄る辺」を取り戻すことができるのか、そして日本社会は信教の自由のあるべき姿を再考できるのか、今まさに重大な分水嶺(ぶんすいれい)に立っている。
(信教の自由取材班)
(終わり)





