
東京高裁が3月4日、世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の宗教法人解散命令を維持すると決定し、清算手続きが各地の教会施設で進められている。その中で、教団の2世信者らでつくる「信者の人権を守る二世の会」(二世の会、小嶌希晶代表)は、信者を対象とした被害実態のオンラインアンケート(3月8~16日、回答総数延べ2240人)を実施。その結果をホームページ上で公開中だ。
精神科医などによるアンケート結果の分析も紹介しており、非信者には理解しづらい「信仰の寄る辺」を失った信者らの精神的苦痛が、専門家によって言語化されている。
「統一教会解散をめぐる信者の健康への影響」という精神科医からの報告書によると、抑うつ状態の悪化や不眠の発症など精神面での悪影響が多数報告されている。精神疾患の治療を受けている回答者は、少数ながら「希死念慮の増悪」や「自殺未遂」を経験したという回答もあった。
アンケート結果から明らかになった健康問題を踏まえ、同報告書では宗教的コミュニティーの喪失やSNS上での激しい非難、家族内での強い対立など複数の要因が関与している可能性を指摘。検討すべき支援策として、①代替となる社会コミュニティーの形成への支援②宗教行事を行う場所の確保③社会的スティグマ(差別・偏見)の軽減に向けた社会的理解の促進④カウンセリング体制の整備――などの必要性を訴えた。
別の精神科医の「家庭連合法人解散における信徒の現状と問題点への考察」という報告書では、アンケートで「集まれる場所がなくなった」「これまでできていた宗教活動ができなくなった」という2点の回答が多いことに注目する。
同じ信仰を持つ者同士のコミュニティーの役割について、報告者の医師は「認知症の家族会」を例に説明している。認知症の家族を持つ介護者にとって「誰も自分の大変さを分かってくれない」という孤独感が大きなストレスとなる一方、同じ経験を持つ家族会で自身の状況を共有すると「外的な支援がなかったとしても、とても心が軽くなる」という。
それと同じく、家庭連合が長年、社会的に「カルト」と批判され、信仰を隠さざるを得なかった信者らにとっては「オープンに関われる関係を持てるコミュニティーはとても大きな心の支えになっていたのではないか」と分析。家族単位で所属していた場合、所属していたコミュニティーを失うことは、大きな問題になり得ると述べた。
さらにこれまでのような宗教活動を行えなくなる際の問題点として「宗教行事によって心が軽くなるというように感じていても、その『心が軽くなる』という活動ができなくなるというのは『息継ぎができなくなる』ような感覚」であり、苦痛を伴うと説明。熱心な信者であるほど、信仰の否定が「人生」「生きがい」「生きる意味」の否定につながり、「生きる希望を失ってしまう人が多数いるのではないか」と懸念を示した。
このほか、スピリチュアルケア学会所属の医師からは「解散命令という宗教的基盤の喪失は、両親の信仰の結実体として生まれた2世にとって、自己の存在価値を揺るがし、死を想起させる深い苦痛を生む」という見解が寄せられた。
二世の会の小嶌代表はアンケート結果について、「想像以上に悲惨な状況が浮かび上がった。身体的な暴力を受けたとの訴えや、精神的な不調から医療機関に通うようになったケース、職を失った事例、学校現場での差別的扱いを経験したとの声など、深刻な実態が確認された」と憂慮する。「一部に存在する深刻な事例については、今後の被害拡大を防ぐ上でも、しっかりと記録し、実態に即した議論を行い、それらを共有していく予定だ」と訴えた。
今後、清算手続きの長期化などを機に、信者と非信者の認識の違いがトラブルにつながる可能性もあるだろう。これらの報告書がその溝を埋めるヒントになることを願う。
(信教の自由取材班)






