
「この混乱に乗じて、脱会屋の働きかけによる拉致監禁・脱会強要がないとも限りません」
東京高等裁判所が世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の解散命令を維持する決定をした3月4日、「全国拉致監禁・強制改宗被害者の会」の後藤徹代表はX(旧ツイッター)に投稿した。
後藤氏は家庭連合に反対する家族から12年5カ月にわたって監禁され、脱会を強要された。脱会屋(職業的ディプログラマー)らから、教団の「マインドコントロール」を解くには「保護説得」しかないと指導された家族によって、信者がマンションの一室などに監禁され、信仰を捨てるまで長期間の拘束を強いられる強制棄教の事例は、教団発表によるとこれまで約4300件発生したとされる。
全国の教会施設に清算人の代理人が立ち入り、使用禁止となる中で「信者名簿が悪用されないか」という不安も強い。SNSで不安の声を上げる信者の中には「再び拉致監禁が増えるのではないか」と懸念する声が出ている。過去に拉致監禁の被害に遭った信者の中には、しばらくの間は家族と会わないようにしているという人もいるほどだ。
著述家の加藤文宏氏も3月5日、X上でこの問題に触れ、「信徒への強制棄教が再度猛威を振るう可能性」を指摘。監禁された当事者が、脱会してもしなくても心的外傷後ストレス障害(PTSD)になる危険性に触れ、「社会全体で意識することで抑止できる側面もある」として、再発防止のための「監視」の必要性を呼び掛けた。
高裁決定が与える信仰への影響に不安が強まる中、「逆に解散になった今こそ、親に真実を伝えるべきだ」と訴える意見もある。
強制棄教を実施した親と拉致監禁された信者の和解に取り組む民間団体「天(あめ)の八衢(やちまた)の会」共同代表で、自身も拉致監禁の被害を受けた男性、猿田彦さん(仮名)は「教会施設にすら入れない状況となり、一部の非信者からは同情の声も上がっている。こちらの主張に耳を傾けてもらいやすい時だ」と指摘する。
猿田彦さんの母親・紀子さん(仮名)は、ディプログラマーの牧師に不安を煽(あお)られ、「保護説得」を実行してしまった一人だ。現在では同会の親子関係修復の相談員として活動しているが、ディプログラマーの牧師からは当時、「親の子育てが失敗したから(教団に)入った」とよく言われ、「(『保護説得』の実行を)急(せ)かされているような感じがした」と紀子さんは話す。
疑問も抱いたが、牧師という立場のある人間が「間違ったことは言わないだろう」と思い込み、「思考停止に陥って、よく分からないまま言われた通りに動いて子供を閉じ込めてしまった」と振り返る。
紀子さんは監禁した親たちについて「騙(だま)されていたことになかなか気付かないから、教えてあげないと分からない」と猿田彦さんに伝えているという。「(親たちは)高齢で行き場がなく、監禁したことを後悔し、誰にも話せないでいる」「親たちが、自身の体験を話してほしい」と願いを口にする。
また、紀子さんは「牧師さんたちはとんでもないことをしてしまった。過去は変えられないが、せめて親子関係の修復を手伝ってほしい」とも語る。親子関係の修復が簡単ではないことは身に染みて感じているが「信者側が親に感謝することで親の心も変わるかもしれない。教会や教義のことだけでなく、もっといろんなことに関心を向けてもらえれば」と呼び掛けた。
猿田彦さんは、教団に期待することとして「信者の信仰を守ることと親子関係修復を同時に見据え、親子関係修復を全国的に取り組めば、教団の名誉回復は早期に成される」と訴えた。
(信教の自由取材班)






