
「判決から3時間で東京から沖縄に来た、清算人代理人の到着の早さはあり得ない」
こう語るのは、那覇市にある世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の教会職員をしていた長田智さん(仮名、50代)だ。
東京高等裁判所による宗教法人解散命令を維持する決定が下された3月4日午後2時ごろ、同教会に清算人の代理人を務める弁護士3人が訪問した。高裁決定が出たのは午前11時。1人は東京から来たが、沖縄まで飛行機で3時間以上は要する。応対した長田さんは「弁護士は前日から沖縄に来ていたのだろう」と思ったという。遠い沖縄まで解散ありきで清算人団が組織されていた。
高裁決定から1カ月を過ぎ、教会が管理する現金・通帳・鍵を代理人弁護士に提出後、職員らは自宅待機となったままだ。長田さんは「教会施設が使用できなくなり、非常に困っている」と嘆く。代理人の弁護士は教会内で作業しているわけではなく、おのおのの弁護士事務所などで作業している。教会の施設内に入ることができるのは、会計業務を行うスタッフのみ。つまり、信者が施設内を使用しても清算業務そのものへの支障はない。
ある職員が代理人に「いつごろ施設を利用できるのか」と質問したところ、代理人は「世間のいろいろな声があるので数カ月は難しいだろう」と言われた。長田さんは「反対派の目を恐れて、家庭連合側に寛大な態度と受け取られかねないかを意識している」と感じ、清算人の判断は「到底納得できない」と強調。「最低限、日曜の礼拝だけでも教会施設を貸してほしい」と切実に訴えた。
さらに憂慮しているのは、施設処分の可能性についてだ。清算手続きの透明性はないため、今後、施設や土地がどうなるのか職員は把握できず、不安を募らせている。
もともと同教会は建て替えを計画していたため、施設の解体作業中だった。しかし、清算手続きに入ったことで改築は一時中断。最高裁判所の結果が出る前に、土地が売りに出されてしまうのではないかと信者らは危惧している。
職員の島田勝さん(仮名、40代)は「信者らが信仰の場を求めて自分たちの献金を集めて買った土地だ。そこには数十年にわたる信者たちの思い出がある。その土地がもしも売られることになったら耐え難い精神的苦痛を受けることになる」と肩を落とした。
最高裁決定前に売却されれば、決定が逆転した場合でも土地は戻らない。だからこそ職員らは、清算業務の透明化を求めている。
清算の始まった1カ月の間に、不動産屋との支払いトラブルも発生した。事前説明では代理人弁護士の指示によって契約中の物件は支払いを続けることになっていたが、ある物件の支払いが止まっていた。無断滞納に腹を立てた不動産屋は、一方的に解約を宣言してきたという。
教会側の不備ではないにもかかわらず、心証が悪くなり今後の契約も難しくなってしまった。職員の新田正さん(仮名、40代)は「不本意な契約解除や地域からの不評などの弊害は自分たちがかぶるのかと、無念の思いでいっぱいだ」と眉をひそめた。
ただ、理不尽だと思いながらも、教団は清算人に協力する方針を取り、清算業務に対して要望の声を上げにくい。職員らは「清算業務の邪魔にならないように」と神経を使っていた。
同教会には約600人の信者が在籍。新田さんは教会施設について、単に礼拝をするためだけの場所ではないと指摘する。教義や信仰を学ぶ場所を失った多くの信者が「心を痛めている」と訴え、「清算人の弁護士に、信仰を大事にしている信者たちの様子を間近で見てもらいたい。そうすれば何か変わるのではないか」と思いを語った。現在、信者有志が個人宅を学びの場として提供しているが、長期の利用は難しい。
(信教の自由取材班)





