トップ社会【寄稿】ノンフィクション作家・福田ますみ氏(中) 「家庭連合」東京高裁決定、パトカー伴い乗り込んだ清算人 

【寄稿】ノンフィクション作家・福田ますみ氏(中) 「家庭連合」東京高裁決定、パトカー伴い乗り込んだ清算人 

家庭連合の教会前に停車したパトカー3台(関係者提供)
家庭連合の教会前に停車したパトカー3台(関係者提供)

 解散命令決定後、教団に何が起きたか。

 福本修也弁護士が語る。

 「自分の事務所に戻ると、すぐに清算人の弁護士から電話がありました。動きがあまりにも早かったのに戸惑いました。すぐにその弁護士が事務所にやってきて、教団の堀正一会長を含め、今後のことについて話し合いを持ちました」

スマホの提出も要求

 清算人は堀会長に、清算業務に全面的に協力する旨の書面にサインするよう求めた。書面の内容は微に入り細に入り、中にはスマートフォンの提出という項目もあり、職員のプライバシーに関わるため、その点は指摘した。また堀会長は清算人に対し、信徒の名簿管理を慎重に行い、個人情報が流出することのないよう念を押した。清算人は次に、その書面の内容を全国の教会や信徒たちに公文として知らせるように要請したが、堀会長は、公文を発出しても、全職員がすぐに対応できる保証はないと応じた。まして信徒への伝達はもっと時間がかかる。一月(ひとつき)に1度しか教会に来ない信徒もいるからだ。

 「宗教法人というものを清算人は、あたかも、全社員に一斉メールを送って意思統一できる会社組織と同様に考えており、信徒はそうした組織の末端の部下でしかないと認識していることが分かり驚きました」(堀会長)

 結局清算人は、公文が全信徒に届くまで待つことをあきらめ、ほぼ全国一斉に12~14時ごろには教会や関連施設に入ったようだ。

 「名古屋の教会にはパトカーが3台出動し、マスコミも大勢やってきて教会を取り巻き、出入りする信徒に向かってフラッシュを焚(た)いたそうです」(同会長)

 その日、長年、本部の受付をしていた女性信徒のSさんは、11時すぎに本部に出勤した。途中、現役の二世信者の会が行っていたライブ配信をイヤホンでずっと聞いていた。11時に結果が伝えられると、画面は、記者団に囲まれた福本弁護士の沈鬱(ちんうつ)な表情を映し出した。「ああ、そうか」

 ショックと落胆の思いで本部に着くと、それから1時間もしないうちに「弁護士です」と告げて清算人がやってきた。最初は3人だったが、その後20人ほどが加わった。その中には警備会社から派遣された警備員が7~8人いて、仰々しさに違和感を覚えた。まさか決定の当日に清算人がやって来るとは思わなかったので、その用意周到ぶりに、解散はやはり前々から決まっていたのだと思わざるを得なかった。

品位守った信者たち

 会長からは、「宗教者としての品位を守るように」という注意があったが、そう言われるまでもなく、職員たちは突然の襲来者に慌てず騒がず、来客用のスリッパを出し、お茶を出したりコーヒーを淹(い)れたりした。清算人たちは教団の財政状態の現状把握に集中したため、まず経理担当者、各種の鍵を管理する管理部、IT担当、さらに不動産関連の担当者が次々呼ばれた。清算人は、それ以外の部署の職員たちに、「今日中に私物を持って夕方6時半には出て行ってください」と言い渡したが、一日では到底できず、翌3月5日いっぱいまで延長された。Sさんは受付の業務のためその後も毎日出勤している。

 「何か起こるって感じではないですよね?」。5日に、清算人の一人がSさんに尋ねた。

 「うちの者が何かすると? あり得ないです。信仰を持った人間ですから、そんなことをしたら教えに反します」

 Sさんは穏やかにそう答えた。

 雨が降った日、裏口に立っていた警備員が傘を差しているにもかかわらず、びしょ濡れになった。Sさんたちは本部内に雨がっぱがないか探したり、タオルを貸したりした。警備員は「助かります」「ありがとうございます」と礼を言った。

 「お困りだろうと思ってごく自然に動いただけですが、私たちの普段の姿に触れて、認識を変えていただけたらいいなと思います。私たちは、抗(あらが)ったり、争ったり反論したりしません。許しなさいという教えを受けていますから」

 Sさんたち信徒に接した清算人や警備担当者はきっと感じるところがあったはずだ。なぜ、こうした善良でまじめな信仰者たちの団体を解散させなければならないのか――と。

【寄稿】ノンフィクション作家・福田ますみ氏(上)

【寄稿】ノンフィクション作家・福田ますみ氏(下)

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