トップ社会【寄稿】ノンフィクション作家・福田ますみ氏(上) 「家庭連合」東京高裁決定、初めから解散ありき

【寄稿】ノンフィクション作家・福田ますみ氏(上) 「家庭連合」東京高裁決定、初めから解散ありき

「信者の人権を守る二世の会」の記者会見で語るノンフィクション作家の福田ますみ氏=3月26日、東京都千代田区(豊田剛撮影)
「信者の人権を守る二世の会」の記者会見で語るノンフィクション作家の福田ますみ氏=3月26日、東京都千代田区(豊田剛撮影)

 ふくだ・ますみ 1956年横浜市生まれ。立教大学社会学部卒。専門誌、編集プロダクションを経てフリーランスに。『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮社)で第6回新潮ドキュメント賞受賞。著書に『ポリコレの正体』(方丈社)、『国家の生贄』(飛鳥新社)など。

具体的反証・反論も完全無視

 2026年3月4日。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する東京高裁(三木素子裁判長)の決定が下った。結果は一審判決に引き続き、またしても「解散命令」である。

 一審、二審ともに家庭連合の代理人を務めた福本修也弁護士は茫然(ぼうぜん)自失した。「信じられない」。思わず脳裏に、善良でまじめな信徒たちの嘆き悲しむ顔が浮かび、家庭連合の代理人として非常に心が痛んだという。

 「これまでにも家庭連合の案件では、裁判所から数々の理不尽な扱いを受けてきましたが、今回は、法人を解散させることも全く厭(いと)わない裁判所の姿勢に恐怖すら覚えました。これは、裁判所を含め国家権力が寄ってたかって家庭連合をつぶしにきたのだなと」

 昨年の東京地裁の決定も理不尽極まりないものだった。証拠がないため、過去に遡及(そきゅう)し、示談、和解まで不法行為と認定し、推論に推論を重ねて下した無理筋の決定だったのである。またこの一審で、文科省が、元信徒の複数の陳述書を捏造(ねつぞう)、改ざんしていた事実が明らかになっている。

 一方、決定書本体だけでも179㌻ある今回の抗告審の決定文は、一審に輪をかけた、これまた唖然(あぜん)とする代物である。家庭連合のやることなすこと、すべて悪意に取り、明確な根拠もないのに片端から不法行為を認定、家庭連合の反論をことごとく退けた。そもそも不法行為を認定するには、誰が、いつ、どのような行為を行って、いかなる被害が生じたのか、具体的な事実を立証しなければならないはずだ。それが全くない。家庭連合をつぶすためならなりふり構わない裁判所の姿勢に筆者も恐怖を感じた。初めから解散ありきだったのだ。

マジックワード使った高裁

 福本弁護士が決定の内容を解説する。

 「一審の東京地裁は、和解・示談から抽象的に不法行為を成立させるという粗雑な図式で大量の不法行為を認定しましたが、不法行為の中身も不明で具体的な証拠もないので明らかに証拠裁判主義に反します。そこで抗告審では家庭連合側は、この不当な推測による認定に対し、各事案の具体的な証拠を引用して徹底的に反証・反論を行いました。ところが高裁は、こちらの反証・反論を完全に無視しました。代わりに持ってきたのは、『不相当献金等勧誘行為』という造語です」

 これは、社会通念上、相当な範囲を逸脱すると認められる献金等勧誘行為のことをいうらしい。

 「この造語をマジックワードとして使ってきたのです。しかしあくまで抽象的な概念であって、具体的事実を特定するものではありません」

 特筆すべきは、2009年のコンプライアンス宣言後の不法行為の確定判決が2件3人しかなく、しかも10年以上前の案件であることだ。これでどうやったら解散に追い込むことができるか。知恵を絞った高裁はこのマジックワードを使い、いかにもそれらしく、和解や示談まで不法行為に当たるとした。それぞれの内容によって「不法行為が成立」したケース、「成立可能性が相応」なケース、「成立可能性が否定できない」ケースに分けて、総数144人がそれに該当するとしたのだ。

 「決定文では、『不相当献金等勧誘行為が行われたと確実に認定することはできない→成立する可能性を否定できない』と腰の引けた表現をしながら、結論では事実を認定したと強弁しました。そして驚くことに、示談の際、元信者が単に申告しただけの金額を被害額に認定するという無茶苦茶なことをやってきました」(福本弁護士)

 家庭連合側は、福本弁護士が先に述べたように、各事案の具体的な証拠を提示して、不法行為が成り立たないことを明らかにしている。

 例えば、本人が自発的に献金を行ったことを示す契約書や、活動中に記した証文などのさまざまな文書、写真、録音テープなどの物証を多数提出したのだが、裁判所はこれらをすべて採用しなかった。理由は、「これらの証拠は断片的なものにとどまっている」「抗告人(家庭連合)は、民事訴訟の件数を減少させるため、文書や写真、契約書を残す対策をとっており、紛争の発生を予期して作成されたものだから、証拠能力には限界がある」等々。

陳述書捏造・強制棄教を無視

 ある和解事案では、原告は正体を隠した伝道をされたと主張したが、原告が出入りした教会には、「世界平和統一家庭連合杉並家庭教会」と明記された看板が掲げられていた。誰がどう見ても「家庭連合」であると分かるはずで、教団は、原告の主張は虚偽であると反論したが、「和解勧告を出した裁判所は、当事者双方から提出された証拠をすべて踏まえて検討したのであり、その中からこの証拠のみを取り出して不法行為が成立しないと断ずることは困難である」と屁(へ)理屈を並べて教団の主張を退けた。

 教団側はまた、原告の中には拉致監禁によって強制棄教させられ、その後、脱会屋に指示されて教団を訴えた元信徒たちが多くおり、彼らが虚偽の主張をしていることを証拠と共に訴えたが、これも裁判所は無視した。

 文科省が捏造(ねつぞう)、改ざんした元信者の陳述書については、ほぼ捏造が明らかな4件につき、「和解や示談の一覧表には含まれていない」と言及したのみである。国家的犯罪であるにもかかわらず、「証拠として採用していないからいいだろう」と言いたいようだ。

国家による異端審問

 決定文は結論として、教団による不相当献金等勧誘行為がコンプライアンス宣言後も続いており、今後も起こる可能性があるので解散はやむを得ないと断じる。なぜなら、教団はコンプライアンス宣言後も、献金収入の予算額を減らしておらず、また実際、予算額の8割、9割の献金を集めている。それはつまり、不相当献金等勧誘行為が続いていることが推認できるというのだ。

 加えて、家庭連合の教義にまで踏み込み、教祖の文鮮明師の言葉を引用して、過度な献金を信徒に要求するのは、そもそもこうした教義や文鮮明師の呼び掛けが原因であるとする。すなわち、この教義を信じる限り、また、教団が実効性のある対策を取らない限り、将来的に不法行為が起こり得ると予測し、これを防ぐには、解散命令以外にないと結論付けている。しかし、裁判において教義に踏み込むのは、信教の自由や内心の自由に抵触し、過去の判例でもタブーとされている。

 かくして教団は「推測」と「可能性」、そして、「悪(あ)しき教義を信奉している」という理由で解散させられたのだ。国家による異端審問である。

【寄稿】ノンフィクション作家・福田ますみ氏(中)

【寄稿】ノンフィクション作家・福田ますみ氏(下)

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