72時間待機で一斉帰宅抑制 一時滞在施設の整備が必要

2011年3月11日午後2時46分、三陸沖の宮城県牡鹿半島の東南東130キロ付近で巨大地震が発生し、マグニチュード9・0、最大震度7を記録した。巨大津波が東北地方の太平洋沿岸部を襲い、死者・行方不明者・災害関連死を合わせて2万2000人超の被害をもたらした東日本大震災は、今月11日で15年を迎える。この間、熊本地震や能登半島地震などが発生。南海トラフ大地震や首都直下地震も予想される。「災害大国」日本に生きる上で学ぶべき教訓、なすべき取り組みについて取材した。(東日本大震災15年取材班)
東京都と港区は2月9日、首都直下地震によって帰宅困難者が発生したという想定での合同訓練を実施。JR品川駅ホームでの鉄道利用者へのシェイクアウト(体を低くして頭を守り、動かずにいる安全確保の行動)訓練や、一時滞在施設の開設・運営の訓練が実施され、報道陣にも公開された。
訓練では、東京都が昨年から運用を開始したシステム「東京都帰宅困難者対策オペレーションシステム(キタコンDX)」を使用。スマートフォンを使って開設している最寄りの一時滞在施設を検索し、一時滞在施設の入館登録もスマートフォン上で行うことが可能だ。帰宅困難者が利用しやすいだけでなく、施設を開設する側も煩雑な手続きの省力化につながる。
一時滞在施設となった品川シーズンテラスでは受付とともに、名前や帰宅先などが記された「施設滞在者カード」を訓練参加者に渡し、乾パンや水、簡易ブランケット、簡易トイレを支給。また、停電が起きたことを想定し、照明を落とす訓練も行われた。
訓練終了後、講評を行った港区の清家愛区長は「災害時の混乱を防ぐためには、点ではなく線や面での対応が必要となる。そのためには各鉄道事業者、地域の事業所、自治体が一層連携を強化していくことが大切」と指摘した。

政府は昨年12月、首都直下地震の被害想定をまとめた。都心南部でマグニチュード7~8級の地震が起きたという想定では、火気使用が最も多い冬の夕方などのタイミングで起きれば、被害者数は最大1万8000人に上ると推定。病院施設が被災したことで、負傷や持病の適切な治療が受けられないことによる災害関連死も、4万人を超える恐れがある。
都心近くの被災は首都中枢機能への影響、約83兆円の経済被害なども大きな懸念事項だ。さらに、偽情報・誤情報への対応も後手に回るとSNSで一気に国内外に拡散し、さらなる混乱が危険視される。
数多くの事前対策が求められる中、被害者数の増減要因の一つに、「帰宅困難者」の問題がある。東日本大震災の際、首都圏では鉄道が運休するなど交通機関がマヒし、東京都内だけで約350万人、5都県合わせて約515万人に上った。
だが、首都圏では生命を脅かす災害規模ではなかったため、「大変だったが何とかなった」という経験が、逆に首都直下地震が起きた際に予想外の被害をもたらす可能性もある。最新の被害想定では、5都県で約840万人の帰宅困難者が見込まれ、国や自治体は警鐘を鳴らしている。
首都直下地震では、職場や学校、保育施設などが自宅から遠く離れているため、地震発生の時間帯によっては親子や夫婦が長期間離れ離れになりかねない。また、訪日外国人や在日外国人の増加、首都圏における高齢化など、多様な避難者にどう対応するかも対策のハードルを上げている。
最悪の事態は火災などの発生で、パニックに陥った帰宅困難者による群衆雪崩で多数の犠牲者が出るケースだ。高齢者や未就学児が巻き込まれれば、ひとたまりもない。過去には関東大震災で避難民が橋の上で押し合い、圧死者が出た事例が記録されている。安否確認の取れない家族を心配し、自動車で迎えに行くことも考えられるが、発災によって道路が寸断される上に交通量が増えれば、救急車や消防車などの緊急車両の通行に支障が出る。
そのため、被災時の帰宅困難者の一斉帰宅抑制は必須だ。救命活動のためにも原則72時間は帰らず、安全な場所で待機することが求められている。3日間という長期間の滞在は、公助だけに頼るのは難しい。緊急時において、各事業者が従業員や帰宅困難者に休憩場所として施設を開放したり、提供用の物資を備蓄しておくなど、「共助」「互助」の実践が不可欠だ。







