
霊感商法といえば、通常、「顧客を心理的不安におとし入れ、印鑑・念珠・壺・多宝塔などの商品を市価の数十倍もの高額な代価で売り付ける悪質商法」(日本弁護士連合会=日弁連=の意見書『霊感商法被害実態とその対策について』1987年7月。以下、第1意見書)と認識されている。
全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が設立された87年からの中心メンバー、山口広弁護士も、東澤靖弁護士(現、明治学院大法学部教授)との共著『告発 霊感商法・統一協会』(87年10月出版)の中で、「先祖や因縁話によって、被害者の不安をあおりたてて、それにつけこんで不当に高価な値段で物品を売りつける商法」と定義している。
文字通りの「物品」販売に関する消費者問題であり、献金や借入が入り込む余地はない。ところが、全国弁連は89年の被害集計から、こうした定義を無視して、献金浄財や借入、ビデオ受講料まで霊感商法の被害集計に組み込んだ。どんな事情があったのだろうか。
その手掛かりとなるのが日弁連の第1意見書と「霊感商法被害実態とその対策について(その二)」(88年3月。以下、第2意見書)が伝える全国規模の被害実態調査の結果だ。
これによると、87年(4月30日現在)の弁護士会分の集計は、被害人数3602人(性別不明2012人)、被害額合計約158億8067万円(1万円未満は四捨五入)。性別不明数が多くかなり杜撰(ずさん)な統計ではあるが、わずか4カ月分が前年1年間の集計(212人、約7億3678万円)から爆発的に増えており、全国弁連の前身の霊感商法被害救済担当弁護士連絡会(被害弁連)が2月に結成されてからの批判キャンペーンが大きな反響を呼んだことが分かる。
そのため、輸入販売元は同年3月末をもって、17年続いた主力商品の大理石の壺(つぼ)、多宝塔の輸入販売を中止し、「誤解を生ずる販売を自粛する」旨を文書で通産省(現在、経産省)などに文書で報告した。
第2意見書は、その結果、「右時期(87年4月)以降の被害の申告は目立って減少している」と指摘。88年2月末段階で弁護士会を通じて判明した「被害」は48人、1億6896万円と激減。同じ10カ月間の全国の消費生活センター等の集計でも、印鑑、念珠等に関する272件の苦情・相談だけ判明し、金額合計は不記載だった。記載できないほど少額だったと推測できる。
これだけ「被害」減少傾向が明らかなのに、全国弁連の88年の被害集計は1290件、約74億1533万円となっている。これが事実なら、同年3月からの10カ月間に1000件、約73億円以上の「被害」が弁連に申告されたことになる。
88年2月までの10カ月間の「被害」とこれだけ食い違うのは、全国弁連の集計の信頼性を大きく揺るがす事実と言える。
(信教の自由問題取材班)






