

東京地方裁判所(以下、地裁)が、世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の2009年のコンプライアンス宣言(以下、コンプラ宣言)以前の不法行為の有無・内容および規模の検討において、教団・信者の献金勧誘等行為につき不法行為が認められた31件の民事判決の「類型的傾向」から推認した「本件問題状況」は、コンプラ宣言後の不法行為の「継続性」の検討において、中心的な役割を果たしている。
まず、検証の核心は、文部科学省(文科省)が教団信者による三つの継続的な「法令に違反する」行為(不法行為)に挙げた「未証し勧誘」、「因縁トーク」、「不相当な高額の金銭を支出させる」ことの継続、減少、消滅を具体的な事例で確認することだ。だが地裁は、それを「本件問題状況の緩和があるかないか」、「本件問題状況に対する実効的(根本的な)な対策が講じられた…か否か」の検証にすり替えて論点をずらした。
教団信者による献金勧誘等行為について、具体的な割合も示さず「本件問題状況は相当に根深い」と断定する立場から、信仰者集団である宗教の特徴を無視し、企業と同じように「通常行われるであろう調査及び指導監督等が行われた(かどうか)」、「KPI(重要業績評価指標)の導入と運用」、「法令順守違反に対する指導改善措置及び制裁等の実施状況」などばかり問い詰めている。
また、「顕在化していない被害の存在が否定されない」として、継続性の検討に「顕在化しない被害」や「被害を訴えないもの」まで混入させるのも、本件問題状況を前提とした話だ。
ただ、このようにいくら周辺部分を塗り固めても、民事裁判で教団の損害賠償責任を認めた判決は高裁で和解となった一審判決6件(原告29人)を含め32件(原告169人)だが、コンプラ宣言の成果が問われる2010年以降に献金等を始めた原告は1件1人しかなく、しかも、15年以降の献金等を巡って教団の賠償責任を認めた民事判決は1件もない、という事実は変わらない。

そこで、地裁は「本件問題状況が現実化した際に…みられるのと同様の事実関係を、具体的に指摘して…被害を訴えている」という理由で、コンプラ宣言以前の「訴訟上の和解」の原告と「裁判外の示談」の申告者について、「(教団)信者による献金勧誘等行為につき不法行為が成立する」という、結論を導くための推論を生み出し、継続性の検証に和解や示談まで含めるようにした。
ただ、訴訟上の和解については、高裁で和解した6件29人を加えた総計100件448人の原告のうち、10年以降に献金等を始めた原告は3件3人にすぎず、17年以降の献金に関する和解は1件もない。これもコンプラ宣言の有効性を示すものに他ならない。
民事判決や訴訟上の和解のこうした事実は地裁も認めているが、「数値面での減少傾向は、弥縫(びほう)策の類によっても生じ得る」「示談の段階で相当額の金銭を得て解決を行うとの意思決定に向かうことも考えられ(る)」などとして、「裁判外の示談の傾向も併せて検討する必要がある」と誘導する。
10年以降の献金等につき示談が成立した申告者167人を被害者として、コンプラ宣言後も「被害は縮小傾向にあるものの、近時まで途切れることなく続いており、なお看過できない程度の規模で被害が生じている」(決定100㌻)と継続性を認めている。つまり、継続性の認定は、裁判外の示談が唯一の根拠になっている。
ところが、この167人のうち実に117人(約70%)がコンプラ宣言前の示談成立者921人にも含まれている。つまりダブルカウントされている。
これは117人が宣言前に献金等の支払いを始め、最後の献金等が10年以降だったためだが、教団が「未証し勧誘」、「因縁トーク」、「不相当な高額の金銭を支出させる」ことを禁じたコンプラ宣言の有効性を検証する時に、宣言前に物品購入・入信した人物を7割も含めるのは正当な検証とはいえない。
全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)のホームページから昨年削除された霊感商法の「商品別被害集計」に「借入」という項目があるが、09年に42件約3億1400万円だった「被害」は13年から1桁(5~8件)となり、18年2件、19年1件、20年以降はゼロになっている。
また、鳴り物入りで制定された「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」(被害者救済法)で、教団に消費者庁が「勧告又は命令を実施した」違反は1件も出ていないことも、継続性の検証で考慮すべき事実だろう。
(信教の自由取材班)
=おわり=
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