文部科学省の世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)への解散命令請求を巡る抗告審が東京高等裁判所で行われている。3月25日、東京地裁民事第8部(鈴木謙也裁判長)が解散を命じる決定を下したが、2009年の同教団のコンプライアンス宣言(以下、コンプラ宣言)後の不法行為の「継続性」認定に合理性はあるのか――。地裁の決定文を基に、その淵源となる文部科学省の解散命令請求にさかのぼって検証する。(信教の自由問題取材班)

政府(文科省)が家庭連合解散に向けて動き始めた転機は22年10月19日、岸田文雄前首相が宗教法人法の解散要件に記された「法令違反」について、オウム真理教に関する1995年東京高裁決定を踏襲した政府解釈(2022年10月14日に閣議決定、同18日にも国会で確認)を一夜にして転換し、「行為の組織性や悪質性、継続性が明らか」なことを条件に、「民法の不法行為」も要件に含める立場に立った時だ。
しかし、民事裁判で教団の損害賠償責任を認めた確定判決は26件(原告140人、賠償認容額合計約18億167万円)、一審判決で賠償請求が認められ高裁で和解した6件(原告29人、一審認容額合計約3億7731万円)を加えても32件(原告169人、認容額合計21億7898万円)だ。
これら32件のうち30件は、信者の不法行為とともに教団の使用者責任、残る2件は教団自体の不法行為も認めた。ただ、対象となった原告の「献金の支払い等」(以下、献金等)は1979年から2014年までで、教団が民事裁判等で問題とされた信者の献金奨励・勧誘・教育活動の指導に乗り出したコンプラ宣言の成果が問われる2010年以降に献金等を始めた原告は1件1人(賠償認容額約476万円)しかいない。しかも、15年以降の献金等を巡って教団の賠償責任を認めた民事判決は1件もない。
これらの事実は、コンプラ宣言が家庭連合の組織、信者に浸透し、問題は激減していることを物語るものであり、同宣言の有効性を意味している。「民事の不法行為」を幅広く認めて解散要件に含めても「継続性」を立証できず、本来なら解散命令を請求できない。そこで文科省は、二つの脚色を行った。
第一は、「被害」規模の水増しだ。「訴訟上の和解」をした原告(94件419人、和解金合計約56億9120万円)と、「裁判外の示談」の当事者(971人、示談金合計約125億2680万円)まで「被害」者に仕立てた。
彼らが訴えたり主張したりした教団信徒や教団の不法行為は民事裁判で認められたわけではない。また、既に双方で合意し、その通りの和解金や示談金を教団や信徒などから受け取っており、代理人を務めた弁護士も報酬を受け取っている。つまり「被害者」となり得ない。
文科省はなぜ、このような無理筋を押し通したのか。民事判決で教団や信徒の賠償責任が確定したのは140人、認容額合計18億167万円だ。全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が拡散した誇張(例えば、紀藤正樹氏は日本共産党国会議員団に対し、霊感商法について「1237億円という被害額は、被害の一部」「仮に10分の1だとしても、1兆円を超える被害が過去に起きている」などと報告した=同党機関紙「しんぶん赤旗」22年7月27日付)とは、懸け離れている。
そのため、訴訟上の和解や裁判外の示談まで含めて「被害」規模を「少なくとも、被害者1559人、被害額合計204億円余り」と膨らませたのではないか。示談金の場合は、コンプラ宣言後も167人に約9億1300万円が支払われたと推算している。
マスコミは、和解した原告や示談した被害申告者がどうして「民法の不法行為」による「被害」者となるのかという考察もないまま、発表を無批判でそのまま流したので、そのもくろみは達成されたと言える。
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