
文部科学省が世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の解散命令を裁判所に請求するに当たり、解散事由となる法令違反の証拠として提出した元信者の陳述書に捏造(ねつぞう)があるとして元信者本人らが5日、文化庁宗務課長(当時)など文科省職員6人を有印私文書偽造罪・同行使罪の容疑で東京地検に刑事告訴・告発した。非公開審理で伏せられた同省の不正行為の一端が明るみになった。(信教の自由取材班)
告訴人の一人で、元信者の男性Aさんは、同日開かれた報告会に寄せたビデオで陳述書の記述と実際の証言内容の食い違いを証言した。Aさんは、「農家の長男でなかなか結婚相手が見つからなかったので」、親戚に勧められ教義を学び結婚相手を見つける目的で入会したと述べている。
だが、文科省が裁判所に提出した陳述書では、「合同結婚式に参加することで先祖が犯した悪行も帳消しにすることができる」と聞かされ、不安になり参加したことになっていた。先祖の因縁話で脅され、「献金をむしり取られた」との記述もあったが、Aさん本人にそのような認識はなかった。
確認作業のため、文科省側と文書のやりとりはしたものの、いつの間にか「(教団に)解散してほしい」という記憶にない記述が追加されており、「私の口からは言ってない。文科省から私の方に送られた文書にも入ってなかった」と不信感を露(あら)わにした。
もう一人の告訴人で、元信者の女性Bさんの場合、陳述書には「娘に唆(そそのか)されて献金した」という旨の内容が書かれていた。Bさんに誘われて教団へ入会した娘の大山さん(仮名)は、Bさんに会って陳述書のことを聞くと「何それ。どこから来たの」と、全く知らなかった。Bさん本人にそういった証言をした記憶はなく、陳述書の詳細な内容は娘から聞いて驚愕(きょうがく)したという。
Bさんが文科省職員から電話で聞き取りを受けたのは2023年11月ごろだった。Bさん名義となっている陳述書は文字が9ポイントのフォントで小さく、しかもページ数は34枚。高齢のBさんが自力で確認するのは困難であるにもかかわらず、読み聞かせなどの確認作業は行われなかった。告訴・告発状では「最初から告訴人Bによる内容確認を予定していなかった」としており、文科省側の手続きの杜撰(ずさん)さも厳しく追及している。
告発人として、母親と共に陳述書の偽造問題に切り込んだ大山さんは報告会に出席し、「お布施をしたらいかがわしいと、年齢が進むとともに宗教者は簡単に否定される。母を見ていると人生を否定されているようで悔しく、それがまかり通るような社会を止めたい」と思いを吐露した。
報告会にはもう一人の告発人で、千葉県八千代市在住の現役信者である小笠原裕さん(62)も参加。小笠原さんが告発したのは昨年12月、東京地裁で行われた尋問手続において発覚した、2通の陳述書の偽造疑惑だ。陳述書を提出していた元信者らが法廷で証言したものの、陳述書と矛盾した証言を繰り返したり、「(内容に関する)記憶がない」などと発言していた。
文科省が作成し提出した123通の陳述書のうち、名義人となっている元信者本人の証言から4通の陳述書に捏造疑惑が出て、告訴・告発に至った。公正公平を期すなら123通の陳述書の名義人全てに証人尋問を行う必要があろう。代理人となった徳永信一弁護士は、「組織的な関与が疑われる。政府が証拠を捏造したとすれば、大スキャンダルだ」と批判した。
一方、阿部俊子文科相は今年2月の記者会見で、陳述書の偽造疑惑に対し「審理を非公開とする趣旨に反しており、適切ではない」と書面内容の公開に反論したが、捏造の真偽については言及を避けている。
「これは絶対歴史の中で埋もれさせず、教科書に載るような事件にしなければいけない」。徳永氏は強調した。






