トップ社会ゲームで災害を疑似体験 若年層の防災感覚高める

ゲームで災害を疑似体験 若年層の防災感覚高める

筆記用具で地図に情報を書き込むなどして、ゲームを進める防災教材「ダイレクトロード」=8月、千葉県(石井孝秀撮影)

関東大震災の起きた9月1日は「防災の日」だが、物理学者の寺田寅彦が残した「天災は忘れた頃にやってくる」の言葉通り、どんな災害の記憶や教訓も、時と共に忘れ去られやすい。災害から命を守るための工夫として、「遊び」を通じて防災感覚を身に付ける試みが始まっている。(石井孝秀)

地域の防災力向上と被災地の地域振興を目指す一般財団法人「3・11伝承ロード推進機構」は今年6月、東日本大震災に関するアンケートを首都圏(1都3県)の5000人(15歳以上)を対象に実施した。それによると、東日本大震災を知らない人が5・1%(255人)、犠牲になった要因を「津波による溺死」であることを知っている人は69%(3249人)にとどまるなど、記憶の風化が着実に進んでいる。

防災をテーマとした遊びやゲームは、大災害後に誕生した子供たちに防災意識を植え付けるだけでなく、広い世代へのアプローチにもつながることが期待されている。

ユニークなものでは、メタバースで展開された防災ゲームがある。7月12~27日に開催されたメタバースイベント「バーチャルマーケット2025 Summer」(HIKKY主催)には、スプリンクラーや消火器などの消火設備を扱う防災機器メーカー「ヤマトプロテック」が参加。防災意識が希薄になりやすい10~30代の来場者が多いことに着目し、メタバース上にある会場で消火器を使う脱出ゲームを展開した。

防災機器メーカー「ヤマトプロテック」はメタバースイベントの展示で、消火器の噴射で炎をまとったモンスターを倒して進む脱出ゲームを展開した=HIKKY提供

ゲームの内容は、炎のモンスターを消火器で倒しながら、ダンジョン(迷宮)を脱出するというもの。ピンを抜かないと使用できなかったり、火元を狙わないと消火困難だったりと、遊びながら消火器の使い方を自然と身に付けられる。

メタバース空間のメリットとして、何度も消火体験を繰り返すことができ、同社の担当者は「もし現実で火災に直面することがあっても、この体験を思い出し、落ち着いて消火器を使ってもらいたい」としている。

災害現場に居合わせたようなシチュエーションで、自分自身がどう考えて行動するかを学べる防災教材もある。神戸市消防局が作成し、同ホームページにて無料で公開されている「ダイレクトロード」だ。「初めての町」「海辺の町」「内陸の町」など幾つかのバリエーションがある。

「初めての町」では、観光で初めて訪れた架空の町で突如、大地震に遭遇してしまうという状況を疑似体験。プリントアウトした町の観光マップや周囲の状況などが記されたカードを元に、筆記用具で情報をまとめつつ、自分たちの生き残る道を探し出すことがゲームの目的だ。

対象年齢は中学生から高齢者までと、幅広い世代で楽しめる。5~7人が1組となり、全体の進行役が指示を出す中、45分間という限られた時間内で参加者たちは避難先を決定しなければならない。

断片化された情報を収集・整理・統合することがクリアの鍵となるが、中には判断ミスを誘う情報が紛れ込むなど、災害発生時の混乱をリアルに再現。しかも参加者同士のコミュニケーション次第では、重要な情報が共有されなかったために、結末の選択肢が狭まるという事態も生じ得る。

「初めての町」は東日本大震災で起きた、実際の出来事を基に作成された。

「集まった人の中で役割分担することを意識したり、限られた時間の中でどのような対応が必要なのか、考えるきっかけにしていただきたい」。神戸市消防局は同ゲームを通じて、①初対面の人であっても必要な情報を引き出すためのコミュニケーション能力②全体の指揮を執れるリーダーシップの必要性③優先順位を精査して情報を広い角度からチェックできる情報分析能力――などを学んでほしいと呼び掛けている。

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