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県教委の入る沖縄県庁舎=2023年1月、那覇市の沖縄県庁(川瀬裕也撮影)
沖縄県内の公立学校で、精神疾患による教員の休職者が2023年度に268人と過去最多を記録した。県教育委員会は、教員の心身の健康を守るため、25年度から5月1日と9月1日を「教職員メンタルヘルスの日」に指定。働き方改革と連携し、教員不足や負担軽減などの課題に取り組むとしている。これに伴い那覇市ではモデル事業も実施され、注目が集まっている。
(沖縄支局・川瀬裕也)
働き方改革で負担軽減目指す
那覇市の事業に期待集まる
県教委の調査によると、23年度に県内で病気休職に至った教員は410人に上り、そのうち268人がうつ病などの精神疾患を原因としていたことが分かった。精神疾患による休職者は、県内教員全体の1・69%を占めている。この割合は全国平均の2倍超で、厳しい状況が10年以上続いている。
そのような中で県教委はこのほど、教員の健康維持と能力発揮を目的に、今年度から5月1日と9月1日を「教職員メンタルヘルスの日」に指定した。それぞれ前後1カ月間を取り組み期間として定め、教員向けのストレス対処法などの情報を発信するほか、市町村と連携し、教職員が相談しやすい体制づくりを構築するとしている。
県教委がメンタルヘルスケアと同時に推し進めているのが働き方改革だ。県教委は昨年度から3年計画を立て働き方改革を進めており、モデル事業として、今年は那覇市立の小中学校で春休みを1週間早める取り組みを実施。また同市内の一部中学校では、クラスの担任を固定せず、複数の教員でローテーションする制度も導入した。
また那覇市は23年5月、県教委と連携し、同市の古謝玄太副市長らが座長を務める専門の検討チーム「教員負担軽減タスクフォース」を設置。文科省の事業を活用しながら、主に精神疾患で休む原因などの分析と、相談体制の拡充、サポート体制の充実などを県内モデル事業として進めている。

このほか、県教委が教員の負担軽減策として力を入れるのが、公立中学校の部活動を地域に託す「地域移行」だ。昨年度、県内でスポーツクラブや、民間のインストラクターなどを活用し、部活の地域移行に取り組んだのは13校31部活で、県教委は今後、実施校を増やしていくとしている。
県教委は4月17日、これらの働き方改革推進計画の昨年度における総合結果を発表した。全県的に教職員に対し、働き方や心身の健康に関して5つの項目でアンケートを実施。
調査報告では、「多くの教職員が、児童生徒との信頼関係や同僚等との人間関係を大切にしながら、働きがいを持って職務に取り組んでいる」と評価。
一方で「教職員の裁量(ゆとり)ある時間の確保」や「心身の健康の確保と安全・快適な職場環境」の整備については課題もあったとした上で、「働き方改革の取組をさらに推進していく必要がある」としている。
県教委は来年度の統計に向け、アンケート調査への回答で、肯定的な評価が80%以上となることを目標に、実効性のある取り組みを模索していくとしている。半嶺満教育長は4月11日、沖縄市で開かれた県立学校校長研究会で、「現場の先生方が働きやすさを実感できるようしっかりと取り組む」とした上で、「保護者や地域にゆだねらるものは理解を得ながらゆだねていきたい」と語った。
教職員の働き方改革を後押しする動きは民間でも広まっている。今年3月と4月に県内2カ所で、教員たちの悲痛な叫びを紹介する「先生たちのSOSメッセージ展」が開催された。教員の労働環境改善などを訴える「沖縄の教職員の働き方を考える会」(波照間千夏代表)が企画した展示会で、「授業時数に追われすぎ…!」や「合唱コンクールが負担」など、教員らの「SOS」の声が壁一面に展示さた。
全国でも最悪水準とされる沖縄の教員不足を解消するため、官民一体となった取り組みが今後ますます求められそうだ。