を掲げ、吉宴会の会員登録希望者を迎える芳珠寺=1月2626日、名古屋市千種区-1024x683.jpg)
少子化が加速する中、民間の結婚相談所やマッチングアプリに加え、県などの行政が婚活支援に乗り出すケースも相次いでいる。いずれも、価値観の一致する男女を結び付けることが一般的だが、そうした「常識」に一石を投じる僧侶がいる。全国の臨済宗妙心寺派寺院が手掛ける婚活組織「吉縁会」発起人で、龍雲寺(浜松市中央区)の木宮行志住職(47)だ。婚活において「相手に合わせる気持ちを持つ」ことの大切さを説く。同会は3月で発足から15年を迎えた。
▽必須の登録会
1月26日、芳珠寺(名古屋市千種区)を会場に、尾張エリアを管轄する吉縁会名古屋支部の会員登録会が行われた。この日は約30人が訪れ、同支部事務局を務める龍泉寺(愛知県扶桑町)の山中龍豊住職(57)らが面談し、本人書類の確認や同会の説明などに当たった。
吉縁会でかかる費用は、婚活イベント参加費の4000円(実費、男女同額)のみと低額だが、参加に先立ち、無料の登録会に足を運ぶ必要がある。手間はかかるが、山中住職は「それだけ(結婚への)意志があるということ。今までに大きなトラブルはなく、会員も男女半々だ」と話す。
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新規登録の対象は25~45歳。会場を訪れた人は2次元バーコードを各自のスマートフォンで読み取り、住職らとの面談を待ちながら専用オンラインシステムに自身のプロフィルを黙々と入力していた。
登録を終えた40歳代の男性は「マッチングアプリは、実際に会ってギャップがあった」と話し、やりとりより前に顔を合わせる吉縁会の仕組みに期待を寄せた。20代女性は「神社仏閣巡りが趣味で興味を持った。最初の一歩として来た」と明かした。登録後には自己紹介などの詳細も入力し、婚活イベントに備える仕組みだ。
▽異なる発想
吉縁会は2010年3月に龍雲寺で始まった。きっかけは木宮住職(当時は副住職)が知人から結婚相談所の費用が高額だと相談を受けたことだ。当時は出会い系サイトの危険性も取り沙汰されており、「お寺なら不安感がなく実費だけでできる」と考えた。
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今では全国1000余りの寺院が協力し、これまで会員登録した人は3万人以上。成婚報告は任意だが、把握している分だけで男女計2200人を超えるといい、木宮住職は「多くの人がお寺を信用してくれている。ありがたい数字だ」と話す。
根強い人気を支えるのは、価値観の一致を重視する一般的な婚活とは異なる発想だ。木宮住職は「仏教的な考え方かもしれないが」と前置きした上で、「幸せになれる相手を探すのではなく、出会った相手と幸せになればいい」と訴える。そうした心の持ち方の大切さを、婚活イベントでも説明しているという。
吉縁会の運営で檀家(だんか)や仏前結婚式が増えることはないといい、完全な慈善事業だ。木宮住職は「民間企業の婚活サービスは高額になりがちだ」と話し、これからも非営利だからこそできる「縁結び」にこだわる考えだ。
(時事)