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少子高齢化が全国的に進む中、昔懐かしい「花嫁道中」を再現し町を活性化させようと、盆踊りでも有名な秋田県羽後町で毎年恒例の「ゆきとぴあ 七曲(ななまがり)・花嫁道中」が先日行われた。昭和39年まで行われていた馬車に揺られながら峠を越える花嫁道中を再現したイベントで、今年は今野家、髙橋家の二組の新婚カップルが選ばれた。花嫁らは行く先々で町内の人たちと観光客から「おめでとう!」と盛大に祝福され、新しい門出となった。(伊藤志郎)
大勢が新婚さんを祝福
「両親に親孝行を」と応募
昭和61(1986)年に「冬を明るいものにしよう」と始まったこのイベントは今年で40回目。最初の年は既婚夫婦だったが、翌年からは通常一組の新婚カップルが参加。今年は「両親に少しでも親孝行したい」と伝統的な花嫁道中の馬車に乗ることを希望し、共に町に住む二組が選ばれた。
道の駅うご端縫(はぬい)の郷(さと)で午後1時からオープニングセレモニーが行われ大黒舞などの民謡でお祝いムードに。安藤豊町長は「幸せな結婚生活を送ってください」と励ます。
今野航(わたる)さんは3年前に祖父の農業を継ぐために神奈川県から移住し、東京で出会った介護職員の璃奈(りな)さんと昨年入籍。一方、敬髙橋愛稀(あいき)さんは羽後町出身で、夫の颯人(はやと)さんについて「優しいところが好きです」となれ初めを話した。

二組を乗せた馬車は、衣装箱や先ぶれを先頭に菅笠(すげがさ)姿の御者が手綱を引く8歳馬「ハヤテ」に引かれ、時々降りしきる小雪の中を出発。盆踊りで有名な西馬音内(にしもない)地区から田代地区の旧長谷山(はせやま)邸まで全長約14㌔の「花嫁道中」に出た。
スタッフには、提灯(ちょうちん)持ちの女子生徒2人を含め羽後中学校から13人が参加したほか、銀行2行の支店長らも付き添う。道路に積雪はないものの、道々にはミニかまくらにロウソクが灯(とも)されメルヘンの雰囲気。道中、「♪蝶よ花よと育てた娘」と歌う長持唄が流れる。
神社での神前セレモニーから始まり、かがり火広場雪まつり、梺郷ノ目(ふもとごうのめ)会館など各地区の雪まつり会場に立ち寄り、子供からの花束や祝福の言葉を受けながら、終盤は約5㌔のキャンドルロードとなった七曲峠を登りきる。

7時半ごろ旧長谷山邸に二組が到着すると、知り合いから次々に声が掛かる。一段高い特設広場に二組が登場すると、秋田の民謡や太鼓演奏があり、集まった数百人から「おめでとう!」と祝福の嵐が投げ掛けられた。
花嫁・花婿による鏡開き、紅白餅とみかんまき、打ち上げ花火が彩りを添えた。その後、旧長谷山邸内では家族や親類・知人を迎えての結婚式・良縁祈願祭などが進行した。
ただし町全体では、少子化を留めるまでには至っていないのが現実だ。人口は昭和30年ごろの3万人弱が平成12年には2万人を割り、今年2月は1万3千人を切った。直近の出生数は1カ月5人以下。町では子育て支援事業などを行うが、人口減少の歯止めにはなっていない。