トップ社会教育「農たび・北海道」を海外にPR

「農たび・北海道」を海外にPR

関東・関西にポスター展示、シンガポールにも

2024年度の最優秀作品となった李詩宇さんの作品と本人(道農政部提供)

就農者の高齢化、後継者不足などの課題を抱える日本農業。加えて地方の人口減少が農村に追い打ちを掛ける。そんな中で農村の活性化策として注目を集めているのが農村ツーリズム。北海道では大学生の若い発想を生かし、農村の魅力を海外に発信することでインバウンドによる農村への呼び込みを図ろうとしている。
(札幌支局・湯朝肇)

札幌大谷大芸術学部と連携

農業に関心ある若者の来道目指す

「北海道はこれまで国内・都市部からの農業に関心のある旅客を受け入れてきましたが、これからは海外にも目を向け、北海道の農村の魅力を発信して呼び込んでいきたい」――こう語るのは、北海道農政部農村設計課の北島正美係長。

道農政部は、これまで都市と農村の交流促進を目的に、道内の自治体や農協・農家など地域ぐるみで旅行者を受け入れる農村ツーリズム(愛称:農たび・北海道)を積極的に推進してきた。その取り組みの一環として2018年度から札幌大谷大学と連携し、同大学芸術学部の学生が作成した「農たび・北海道」のPRポスターを東京と大阪、札幌市内にある道産品アンテナショップ「北海道どさんこプラザ」で展示。さらに今年は初めてシンガポールにある同プラザ2店で展示を実施、農たび・北海道への誘客を図りたいとしている。ところで同ブラザに展示されるPRポスターの選定は毎回、コンテスト形式で行われる。今回は同大学芸術学部グラフィック・イラスト専攻の3年生21人が、昨年6月に石狩市で道が主催した「農村ツーリズム現地講座」での田植え体験や地元食材を使ったお弁当の試食などを基にPRポスターを制作。それぞれの作品は、昨年12月に開催した農業や観光分野の関係者ら約240人が参加した「農たび・北海道ネットワーク研修会」の場で発表され、参加者のアンケートを参考にしながら審査。その結果、今年度は最優秀作品として李詩宇(イ・シユ)さんの作品が選ばれ、シンガポールの「北海道どさんこプラザ」に展示されることになった。

PRポスターを展示している「北海道どさんこプラザ・シンガポールミレニアウォーク店」(道農政部提供)

ちなみに、李詩宇さんはこの作品について、「『農』という字を中心にして、農業体験をしている人を描きました。ただ、農業をしている人を描くのではなく、特産品である乳製品や野菜、花畑の丘やポプラ並木の景色、動物たちも加えて“北海道ならでは”を意識しました」と語る。

一方、ポスターの左下には北海道の50カ所の農泊地域と農泊体験したいユーザーをつなぐ「北海道農泊体験情報HP」の2次元コードを掲載しているほか、近年、インバウンドを含めた旅行者の増加に伴い、習慣の違いや理解不足による畜舎や農地などの私有地への無断侵入等の事例があることから、旅行者に農泊地域に訪れる際は、私有地への無断侵入防止のマナー啓発文を掲載している。

北海道が農村ツーリズムの取り組みを始めたのは平成29年度(2017年度)から。農家での宿泊を体験する農泊は、じかに地域の魅力を体感できる魅力がある半面、受け入れ態勢の整備が不可欠。道農政部はこれまで取り組み地域の掘り起こしや意識醸成を図る意見交換会やセミナーを積み重ねてきた。令和3年には北海道農泊推進ネットワーク会議を設置。全道各地で毎年「農村ツーリズム人材育成セミナー」も開催している。札幌大谷大学との連携もその事業の一つとして位置付け、情報発信の一翼を担っている。加えて、昨今のインバウンドの増加に合わせて海外からの誘客を狙い、今回のPRポスター「北海道どさんこプラザ」はシンガポール店展示となった。

「全国的に農村部でのインバウンドは増加傾向にあります。北海道は以前から台湾をはじめ東南アジアからの観光客が多いのですが、農泊はそんなに多くありません。新型コロナ禍で減少した農泊ですが、インバウンドの増加を機会に、海外の方々にも農家に留まっていただいて北海道の魅力を知ってもらいたい」(北島係長)と語る。PRポスターは4月末まで展示される。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »