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東日本大震災10年 福島と台湾の若者、ツアー企画し風評払拭へ


《東日本大震災10年 未来に繋げる希望(1)》

 東日本大震災から10年がたつ。復興が進む一方で、風評被害対策や災害の記憶の風化など、取り組むべき課題はまだ山積みだ。震災が残した爪痕はなかなか消えない中、困難に立ち向かい、未来を切り開こうとする人々にスポットを当てた。(東日本大震災10年取材班)

福島第1原発を見学する台湾の若者たち(NPO法人「元気になろう福島」提供)

福島第1原発を見学する台湾の若者たち(NPO法人「元気になろう福島」提供)

 親日として知られる台湾だが、実は東京電力福島第1原発(福島県双葉郡)事故に伴う、福島県産品の食品輸入規制は現在も続けられている。日本国内ですら福島への風評被害がある中、海外からの視線も未(いま)だに厳しいのが現状だ。

 そこで最近、福島のリアルな復興状況を台湾に伝えようという動きが出てきた。台湾人の若者が福島県各地を巡り、そこでの体験や感じた魅力を発信する取り組みが、昨年11月16~21日に行われた。

 この企画は、NPO法人「元気になろう福島」(双葉郡川内村)と「東京台湾の会」(東京都中野区)との協力によって実現した。当初は、台湾の政治家や大臣を招待するという案もあったが、政治的な側面が強くなってしまうことを懸念。そこで、同会を通じて集まった台湾の若者を中心に、ありのままの福島を見学してもらうツアーの開催を決めた。「元気になろう福島」の本田紀生理事長は、「肌で福島を感じ、地元の人たちと交流してもらった方が、言葉で説明するよりずっと伝わる」と語る。

 ツアー参加者は、留学などで日本に在住する20~30代の台湾人5人で、グループ名は「福島前進団」。掲げるミッションは、「福島県を隣国の一地域として見るのではなく、日本の大きな荷物として捉え、その重荷を共に背負うという姿勢」を持ち、「両国国民の努力によりその重荷が宝物に変わる」ことを目指す。

 ツアーは、福島市内の温泉や作曲家・古関裕而の出身地などを皮切りに、県内各地の農家や観光地を見学。さらに、福島第1原発やJヴィレッジも訪問し、最終日には県内大学生などと意見交換する場も設けられた。

 東京医科歯科大学に通う許宸瑋さん(24)は原発を見学し、「毎日1000人ほどの人が働き、一刻も早く元のきれいな福島に回復させようという気持ちが感じられた」と感動した様子。台湾の輸入再開については、「まずは加工品や観賞用植物から解禁されれば、台湾での福島の印象も変わっていくだろう」と期待を込めて述べた。

 メンバーの中には、福島に行くことを家族から心配された人もいる。日本観光大学の学生である李昀霏さん(25)は、家族から「大丈夫?」と尋ねられ、ツアーが安全であることを説明しなければならなかった。台湾の友人からも「福島って行けるの?」とけげんな顔をされたという。

 また、自身も最初は普通の観光ツアーと思っていたら、マスコミからの注目度の高さに驚いた。ツアーを振り返り、「参加してみて福島の人々の温(ぬく)もりを感じ、また防災についても学ぶことができた。ほかの台湾の人も連れてきたい」と笑顔を見せる。

 今後も「福島前進団」は、台湾人と福島をつなげるコミュニティー組織として、福島の情報発信を行っていく。台湾の一般市民を対象に定め、来年度にはメンバーを1万人に増やすことを目標とする。コミュニティー拡大を通じて、福島の風評被害の払拭(ふっしょく)や輸入解禁につなげたい考えだ。

 本田理事長は今回の取り組みに手応えを感じる一方で、「ツアーで福島各所を見てもらったが、1週間しかなかったので慌ただしくなってしまった」と反省する。時期は未定だが、同企画は今年も実施予定で、「(次回は)一つの市町村に長く滞在してもらい、もっと被災地の方と交流したり、農作業を体験できるような企画を検討している」と意欲を示した。