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危険なブースト型核開発 米安全保障政策センター上級研究員 フレッド・フライツ氏(上)


2014世界はどう動く
識者に聞く(5)

北朝鮮情勢

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フレッド・フライツ 1962年生まれ。米中央情報局(CIA)、国務省、下院情報特別委員会などで計25年間勤務。ブッシュ前政権ではジョン・ボルトン国務次官の首席補佐官を務めた。2011年に情報サイト「リグネット」を設立、現在も主任分析官を務める。昨年12月からシンクタンク「安全保障政策センター」上級研究員。

 ――北朝鮮・金正恩第1書記の義理の叔父で事実上のナンバー2だった張成沢氏が粛清された。

 張氏は若い正恩氏を支える「摂政」として、国家を運営していくものとみられていた。だが、写真から張氏の姿が削除されるなど、北朝鮮の歴史から消し去られてしまった。正恩氏は専門家の予測より早く権力を掌握したと考えられる。

 張氏は長期にわたって実権を握ろうとしたが、正恩氏がこれを望まなかったのではないか。また、他のエリートたちが利権を拡大するために、正恩氏に働き掛けて張氏を排除させたと考えられる。

 ――張氏は改革・開放路線を支持する「改革派」との見方もあった。正恩氏は張氏の路線を拒否したということか。

 粛清は政策をめぐる対立ではなく、権力争いの結果だと思う。張氏が分派を形成していたことが本当であれば、粛清によって正恩氏の権力基盤は強化されるだろう。

 ――北朝鮮は2010年11月、米専門家に寧辺のウラン濃縮施設を公開した。北朝鮮のウラン濃縮活動をどう見る。

 北朝鮮は現在、核兵器6~12個分に相当するプルトニウムを保有しているというのが、米情報機関の見方だ。ウラン濃縮を通じて、核兵器製造の「第2ルート」を確保しようとしている。

 プルトニウムを生産する原子炉と同じように、ウラン濃縮施設も探知できると我々は考えていた。だが、米情報機関は寧辺の濃縮施設に全く気付かなかった。北朝鮮が濃縮施設を秘密裏に建設できたとすれば、寧辺以外にも秘密施設が存在する可能性がある。

 より深刻な問題は、北朝鮮が進めているのはプルトニウム型かウラン型かではなく、ブースト型核分裂弾という次の段階に進んでいるかどうかだ。ブースト型は核融合で中性子を発生させて核分裂の効率を高める構造で、より少ない核物質で爆発の威力を大幅に向上させることができる。

 北朝鮮は2012年5月に核融合反応に成功したと発表した。北朝鮮がこの技術をマスターしたとは考えられないが、初期段階とはいえブースト型の開発に取り組んでいる可能性があることは新たな危険な一歩だ。

 ――北朝鮮は現在、比較的おとなしくしているが、近い将来、再び挑発的な行動を取るだろうか。

 おそらく今年、より挑発的な行動を目の当たりにすることになるだろう。長距離ミサイルの発射実験を再び行うことはほぼ間違いない。核実験を行うこともあり得る。

 ――日米は北朝鮮の脅威にどう対処すべきか。

 米国は日本とより緊密に連携する必要がある。韓国は北朝鮮と同じ民族であり、この問題で頼れる同盟国は日本だけだからだ。

 米国は日本人拉致問題にもっと真剣に取り組むべき時だ。米政府はこれまで、拉致問題を脇に追いやってきた。だが、これは重大な問題だ。北朝鮮による非道な人権侵害を無視してはならない。

 北朝鮮問題は地域全体や世界に影響を及ぼす問題だ。北朝鮮が提供した技術をもとにイランはミサイル開発を進めているほか、シリアやリビアなどにもミサイルを売却した。テロ支援や違法な金融取引、紙幣偽造についても、北朝鮮に責任を取らせなければならない。これらの行為をやめさせるには、日米が隙間がないほど緊密に連携することが重要だ。

(聞き手=ワシントン・早川俊行)