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秘密保護法は情報共有を強化 元米国防次官補 ウォレス・グレグソン氏(下)


2014世界はどう動く
識者に聞く(4)

安倍政権

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 ――日本で特定秘密保護法が成立したが、どう評価する。

 この法律により、日米間の情報共有を妨げてきた一つの障害が取り除かれた。米国側から見た場合、機密を漏らした者への罰則がないというのは、機密を守る適切な制度が存在しないと映っていた。

 安倍晋三首相はこれまでできないと思われていたことを数多く成し遂げている。特定秘密保護法もその一つだ。日本との情報共有に頭を痛めていた米国としては、同法の成立を非常に歓迎している。

 また、この法律は武器輸出三原則の緩和と合わせ、日米の防衛産業による装備品の共同開発拡大につながるだろう。

 ――安倍政権は日本版NSC(国家安全保障会議)を発足させた。

 これまで日本の首相が緊急事態に対処するのは難しかった。外相や防衛相など他の大臣は多くの職員を抱える一方、首相には最小スタッフしかいないからだ。東日本大震災直後、首相への情報伝達がうまくいったとは言い難い。NSCは他の大臣から責任を引き受けるわけではないが、首相や官房長官らは省庁間の垣根を越えた取り組みを組織しやすくなる。

 一方、米国のNSCは日本のカウンターパートを得たことになり、日米の政府間協議にとって理想的な組織が発足したと言える。これも「日米一体化」の取り組みの一部だ。

 ――安倍政権が目指す憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認をどう見る。

 北朝鮮がミサイル発射準備をすれば、米国はイージス艦を展開するなど、日本を守るために行動する。だが、日本は日本本土に向けて発射されたミサイルは迎撃できるが、アラスカ向けのミサイルは迎撃できないというのは非論理的だ。

 集団的自衛権の行使を容認したからといって、日本が好戦的になるわけでないし、平和を愛する国だという本質は変わらない。現在の憲法解釈が生み出された時と比べ、直面する脅威が変わったと日本が認識しているということだ。

 ――米国は「シェール革命」によって世界最大のエネルギー産出国になる見通しだ。米国が中東の原油依存から脱却すれば、中東における軍事プレゼンスは低下し、日本のエネルギー供給ルートが不安定化する恐れはないか。

 米国が中東を気にする必要がなくなるという見方は全くの誤りだ。日本など米国の同盟国・友好国が中東のエネルギーに依存している限り、米国はアジアへの「リバランス(再均衡)」の一環で、中東で許容できるレベルの安定を維持する必要がある。リバランスを米国が中東から撤退してアジアに移るという意味だと勘違いしてはならない。

 エネルギーのアクセスをめぐる懸念は、過去に大きな紛争の原因となってきた。これを繰り返すわけにはいかない。アジアでエネルギーをめぐる紛争を起こさせないためにも、米国は中東に適切なプレゼンスを維持すべきだ。

 ――リバランスは国防費削減で具体化が遅れているとの見方もあるが。

 軍事面のリバランスは極めて重要だが、それだけではない。リバランスには政治、経済、外交、教育などさまざまな分野がある。アジア諸国に領事館を増設したり、民生向上のための開発プロジェクトにも力を入れる必要がある。

 オバマ大統領が昨年、東アジアサミットを欠席したのは残念だった。米政府はアジアで開かれる会議への出席を絶対的な優先事項とすべきだ。

 軍事面のリバランスも前進している。国防総省は西太平洋優先を繰り返し強調しており、国防費削減がリバランスを妨げることはない。

(聞き手=ワシントン・早川俊行)