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不動産バブルの崩壊を招く中国経済 拓殖大学客員教授 石 平氏(上)


2014世界はどう動く
識者に聞く(18)

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せき・へい 1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学科卒業。現在、拓殖大学客員教授。2007年日本に帰化。著書に「なぜ中国人は日本人を憎むのか」「謀略家たちの中国 中国四千年の悲哀」など多数。

 ――住宅など不動産を筆頭に中国経済の変調が著しい。

 結果的に10年間、中国は不動産バブルの膨張を助長する政策をとってきた。

 中国政府は2005~06年、不動産バブルをそのまま放置してはいけないという危機意識が働いて、その時、手をつけたかった。

 しかし2008年、リーマン・ショックで世界同時不況が起きてしまった。その影響を受け中国経済は減速を余儀なくされた。危機打開のため中国政府がとった方策が、人民元を乱発して市場に大量に流し込む金融バブルの発動だった。

 それで景気を刺激した。しかし、市場に出回った大量の人民元が、不動産投資に流れ込んだ。それで逆に不動産バブルが助長された経緯がある。

 さらに金融バブルの結果、インフレ問題が2010年から生じている。食品を中心に物価は大幅な上昇となった。貧困層が食べていけなくなり、社会的大動乱が起きるようになった。そのため結果的に金融引き締め政策をやってしまう。

 そうすると中小企業が銀行から資金を調達できなくなる。経営難に陥った大量の中小企業が倒産する。金融引き締め政策の下で、中小企業の資金を手当するため、闇金融が生じてくるようになった。

 ――シャドーバンキング問題の発生だ。

 そのシャドーバンキングが膨らんでくると、いずれ生じてくる金融危機のリスクが増大する。シャドーバンキングは高い金利で資金を貸し付ける。しかし、借りるほうが返済できなくなると潰れる。すると典型的な金融危機が発生する。

 それを防ぐため、中国政府が昨年から再び、金融引き締めに傾いている。

 一定額以上の金を銀行から出さない。その中で昨年、出てきた潮流が、各商業銀行の住宅ローン貸出停止措置だ。住宅ローンは回収が長い。不動産バブルがいつ破裂するか分からない状況下で、高くなったリスクを回避するための措置だった。

 そうして不動産には金を貸さないとなると、あちこちで不動産が売れなくなる。しかも、多くの地方政府そのものがシャドーバンキングから大量に資金を調達して、町ごとそっくりつくってきた。しかし、当然、個々の不動産は売れなくなり、不動産バブルの崩壊を招く。在庫だけが増える一方、借り手が消えてしまう。

 実際、昨年から中小都市では、不動産価格の大幅下落が始まっている。顕著な経済成長で名を馳(は)せた浙江省温州市では、不動産平均価格が昨年末までに、最盛期の半分以下に落ちている。いずれ大都会にも、この潮流は波及してくる。

 今、昔のような金融緩和でもやらない限り、不動産バブルは確実に弾ける。しかし、金融緩和をもう一度やると、金融危機の発生を招くだけでできない。結局、政府は金融を守るためにも不動産を犠牲にするしかない。

 ――不動産バブル崩壊は社会的変容を招くのか。

 不動産バブル崩壊で中産階級が全滅する。マンションを2、3軒持っている人々が、価格の大幅下落で残されるのはローンだけとなる。そうなると内需が極端に落ち込む。内需で期待されるのは中産階級であるにもかかわらずだ。金持ちは海外で消費する。貧乏人はそもそも期待できない。

(聞き手=池永達夫)