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露の大陸棚延伸申請で各国も調査隊 ロシア外交アカデミー国際法学部長 アレクセイ・A・モイセエエフ氏(下)


2014世界はどう動く
識者に聞く(17)

北極海

400 ――ロシアが2007年、潜水艇を使い北極点付近での海底調査を行い、海底にチタン製のロシア国旗を立てたことが、批判的な意見も含めて大きな反響を呼んだ。

 ロシアの深海調査艇「ミール1」「ミール2」が北極点の海底、深度4261㍍に潜水し、海洋学的見地、地質学的見地、海氷学的見地からの調査を行い、そして北極点の海底にロシア国旗を立てたことは、世界各国から否定的な反響をもたらした。

 つまり、この調査自体が国際社会から、学術調査ではなく政治的行為であると評価されたのだ。実際、「ミール2」にはスウェーデン人と、オーストラリア人の海洋研究者が同乗していたが、彼らの国の国旗を北極点海底に立てることは許可されなかった。かつて北極点に初めて到達した探検家ピアリーが米国旗を極点に掲げたように、北極点海底への一番乗りを示すという象徴的意味で国旗を立てるなら、スウェーデンとオーストラリアの国旗を共に立ててもおかしくはない。

 米国務省のケーシー報道官(当時)は「ロシアが北極海底に設置したロシア国旗は、ロシアの大陸棚延伸申請においていかなる法的意味も持たない」と述べた。

 ロシアにおいても評価は定まってない。北極で他国との利害対立が広がる中で、同地域でのロシアの力を示し、国家的誇りを高めたという地政学的意味を評価する声がある一方、北極は全人類に与えられた財産であり、北極を分割しようとしている北極国家5カ国の所有物ではない、という意見も広がりを見せている。

 ロシアがバレンツ海などの大陸棚を、基線から200カイリを越えて北極点まで延伸する申請を大陸棚委員会に行ったが、それは、ロモノソフ、メンデレーエフ両海嶺(かいれい)がシベリア大陸棚の自然延長であることが根拠となる。

 潜水艇が採取した試料により、両海嶺が大陸の延長であることが証明されたとされる。ただ、両海嶺がロシアが主張するように、ロシアからグリーンランドに向かって伸びているのか、それとも逆にグリーンランドからロシアに向かって伸びているのか、これを証明するのは困難だと考えられる。

 ――ロシアはどのような方法で、北極における自らの主張・要求を実現しようとするのか。

 もし、ロシアが申請した大陸棚延伸が認められなかった場合、北極をめぐる政治情勢は不安定化する恐れがある。もし、ロシアの大陸棚延伸が認められれば、北極国家はそれに対応した何らかの国際的合意を模索するだろう。

 この数年、ロシアに隣接した北極海域で、米国、ノルウェー、カナダなどが海洋調査船、海洋調査隊を派遣し、そのプレゼンスを活発にアピールしている。さらに、大陸棚をめぐる争いに、デンマーク、スペイン、中国、スウェーデン、フィンランドやその他の国々が加わってきた。

 シベリアから広がる大陸棚は北極点において、アラスカから伸びる米国の大陸棚、グリーンランドから伸びるデンマークの大陸棚、そしてカナダから伸びる大陸棚がぶつかる形となっているのだ。

 ――かつてソ連には北極海航路管理局が存在し北極圏に設置した観測基地で24時間体制で天候や海氷の状況を監視し、航路沿いに港を整備した。北極海航路の現状は。

 欧州とアジアを結ぶ最短の航路は、ロシア沿岸の北極海を通る北極海航路だ。例えばドイツのハンブルク港から日本の横浜港まで、北極海航路経由で1万2000㌔、スエズ運河経由だと2万500㌔だ。ただ、外国籍船舶の北極海航路通過は、あらかじめロシア政府の許可を受ける必要がある。北極海航路が通過する多くの海峡が、ロシアの領海内にあるためだ。実際にいくつかの国家が、北極海航路の「国際航路化」を主導しようとしており、ロシアが警戒を強めている。

(聞き手=モスクワ、イリーナ・フロロワ)