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NATOは露の囲い込み警戒 ロシア外交アカデミー国際法学部長アレクセイ・A・モイセエエフ氏(上)


2014世界はどう動く
識者に聞く(16)

北極海底の宝庫

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アレクセイ・アレクサンドロビッチ・モイセエエフ 法学博士。ロシア国際法協会副会長。ロシア外交アカデミーを卒業しロシア外務省に入省。世界銀行で研修。シドニー大学名誉研究員。欧州安全保障協力機構(OSCE)から監視員としてウクライナ大統領、議会選挙に派遣される。国際法、国際経済法、国連システム、国際安全保障などが専門。

 ――北極の海底には多くの天然資源が眠っており、海氷が解けて減少すればその開発が容易となる。また、海氷の減少により、年間を通じて北極海航路を利用することが可能となる。

 2009年、サイエンス誌が、未探査の北極海底資源に関する公式データを公表した。それによると、北極海域の大陸棚に、世界の炭化水素の20%が埋蔵されている。石油は世界全体の13%、天然ガスは同じく27%に達する。石油の多くはアラスカ沿岸地域とその周辺に、そして、北極海底の天然ガスのほぼすべてはロシア沿岸に存在している。 さらに、銅、ニッケル、錫、プラチノイド、レアメタル、レアアース、金、ダイヤモンド、タングステン、水銀、重金属、光学材料など、極めて豊かな資源が眠っている。これら資源のほとんどは、水深500㍍よりも浅い場所にある。

 気候の変化―北極の温暖化により同地域の資源開発は容易になり、世界の国々が関心を高めている。また、資源開発のほかに、欧州とアジア、米国を結ぶ最短コースである北極海航路の開発が加速するだろう。観光の面でも有望だ。

 ――一部のマスコミでは、北極の資源をめぐる争いがエスカレートし、軍事衝突に発展する可能性も指摘しているが。

 ロシアが北極地域における主張・要求を取り下げることは考えにくい。ソ連崩壊後、ロシアは長年にわたって中断していた軍による北極地域の監視行動を復活させた。国際社会はこれを、ロシアによる北極地域の分割領有、つまり同地域の石油や天然ガスその他資源の囲い込みへの布石、と認識している。

 米国は「北方からの脅威」に備え、北極圏で偵察飛行を活発化させた。カナダは、自らの北極圏の領土を守るために、軍のプレゼンスを高めると言及した。北大西洋条約機構(NATO)軍も活動を活発化させている。北極国家5カ国のうち、4カ国までがNATO加盟国だ。

 ――ソ連時代、北極は軍事衝突の恐れと緊張が張り詰めた米露対立の最前線だったが、近年、ロシアの大陸棚延長申請などが示すように各国の利害が衝突する最前線となった。

 北極の海底を国際法に従いどのように分割すべきかという問題について、国際社会に統一された見解はない。公式な北極国家であるデンマーク、カナダ、ノルウェー、米国、ロシア5カ国の間に統一見解は存在しない。それは、1994年に発効した国連海洋法条約に署名した世界119カ国においても同様だ。

 この国連海洋法条約以外には、北極国家5カ国はお互いに、北極海海底に対する権利を明確に規定した特別な条約を結んでいるわけではない。すなわちこの5カ国は、国連海洋法条約に基づき、北極海において自らの大陸棚を延長できる可能性を等しく持っている。 この5カ国のうちロシアは2001年、大陸棚限界委員会に、北極海の大陸棚延長・境界画定を申請した。北極海底のロモノソフ・メンデレーエフ両海嶺(かいれい)が東シベリア、すなわちユーラシア大陸の延長であることを証明し、ロシアの大陸棚延長を実現するためである。ロシアの大陸棚延長申請に触発され、同地域における法的地位を確立しようという各国の活動が急速に活発化した。

(聞き手=モスクワ、イリーナ・フロロワ)