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民主主義の再構築がEU行方の課題 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス客員上級フェロー ヘニング・マイヤー氏(上)


2014世界はどう動く
識者に聞く(14)

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ヘニング・マイヤー 独トリーア大学卒、ロンドン・メトロポリタン大学で比較政治学博士号取得。2010年から現職。グローバリゼーションに関するコンサルタント会社「ニュー・グローバル・ストラテジー」代表、オンライン雑誌「ソーシャル・ヨーロッパ・ジャーナル」編集者。

 ――単一通貨ユーロがスタートして15年たつが、ユーロ発足当時の欧州連合(EU)の将来は大変明るかった。しかし、ユーロ危機で今日、EU統合プロジェクトは後退している。EUへの期待は多くの加盟各国で小さくなっている。EUをどう展望するか。

 今年はEUの将来にとって重要な年だ。特に5年ごとに実施される欧州議会議員選挙が5月にある。経済危機や政治統合化の危機という状況下で行われるので、今度の選挙は(EUにとって)決定的な選挙になるだろう。

 多くの人は、選挙でEUの危機的状況がうまく反映されるものと予想している。欧州議会での政治運営は容易ではなくなるだろう。それから、選挙後に、恐らく10月に決まる欧州委員会の新体制がどうなるかも問題だ。

 ――EUの明るい見通しはあるか。

 新体制が発足する今後1年から2年次第だ。EUの政策決定者たちはユーロ危機に様々な対応をしたが、間違った方向で行った。とりわけ緊縮政策がそうで、財政健全化のために自助努力するという考え方だった。その結果、経済的ダメージだけでなく、ギリシャやスペインなどで見られるように政治的社会的なダメージを引き起こした。

 危機にいかに対処するか、前進的に進むかどうかが決定的となる。EUプロジェクトはゆっくりと幻想を持ちながら支援する見方が一般化しているが、これが継続するかストップするか逆転するかによって将来は決定されると思う。

 ――今後EUにとって最重要の課題は何か。経済改革、民主主義的プロセス、統合や拡大問題などがあるが。

 最優先課題は依然としてユーロ圏の改革と安定化であるべきだ。なされるべきことがなお多く残っている。銀行同盟、共同債務責任(ユーロ共通債)などの改革案は熟知されているものの、政治的に遂行できるかどうか問題だ。

 2番目の優先課題は、EU統合化の合法性に関する幻想を抱くことをやめることだ。

 われわれは民主主義を再構築しなければならない。例えばギリシャのように加盟国家レベルでの民主主義が困難になっている一方、EUレベルの決定プロセスも改善される必要がある。

 EUプロジェクト全体を遂行することが21世紀に適合するものとならなければならない。現在、拡大問題などは優先課題ではない。

 むしろ、英国などでは最近の拡大結果にどう対処するかが議論されている。1月1日以降、ルーマニアとブルガリアからの労働者をどう受け入れるかが問題になっている。

 ――英国などではEU移民規制の動きが出ているが。

 キャメロン首相はEU市民の権利を個人や出身国の経済的豊かさと連関させることを提案して、域内自由移動の廃止まで提案している。これはEUの基本原則の一つを廃止する試みに他ならない。

 しかし、国家レベルの議論は問題の解決にならずEU内の分裂を増すだけだ。EU統合を阻止あるいは逆転したい者たちを応援することになる。

(聞き手=ロンドン・行天慎二)