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新憲法で市民国家建設を エジプト「改革発展党」党首 アンワール・エスマット・サダト氏


2014世界はどう動く
識者に聞く(7)

エジプト情勢

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アンワール・エスマット・サダト サダト元大統領の甥。前人民議会議員。エジプト外務委員会委員。NGO組織「社会発展と富のためのサダト協会」議長。貧困の撲滅と人権の拡大を目的に活動。2009年「改革発展党」を創設、党首となる。12年、議会人権委員長。11年1月革命後の憲法起草委員会委員。

  ――ムスリム同胞団主導のモルシ前政権が残した教訓は何か。

 モルシ政権の最も大きな失政は、自分の勢力以外の勢力を排除したことだ。しかし現暫定政権も同じような失敗を繰り返す可能性がある。

  ――ムスリム同胞団は、現在エジプトの治安を非常に不安定にし観光産業に打撃を与えている。

 彼らの抵抗は、新憲法の国民投票(1月14、15日予定)を契機に変わると思う。国民が新憲法を支持すれば、同胞団もそれに従わざるを得なくなり、何らかの形で、暫定政権側とのコンタクトを取り始めるだろう。さらに議会選挙や大統領選挙を経過すれば、国民の総意によって選ばれる新政権に対して、いつまでも抵抗を続けるわけにはいかない。

  ――エジプトは現在、ロシアと中国に接近しようとしている。米国の混迷する中東政策に原因があるのか。

 エジプト暫定政権がロシアと中国に接近しているのは、プロパガンダであって、欧米世界に対する牽制(けんせい)の意味がある。米国が軍事費の一部削減をしたことに対し、米国が面倒見ないなら、ロシアや中国に支援してもらうぞ、というポーズだ。ただ、これを機に、中露と関係を深め、バランスの取れた外交を推進することもどこかで考えている。

  ――イラン新政権の核政策は、どこまで信用できるか。

 信用はできない。国際社会側が油断をすれば、その隙を突いて、核兵器開発に踏み切る可能性がある。だから、国際社会側は常に監視する必要がある。

  ――シリア内戦の解決法は?

 シリアの状況は深刻だ。解決法としては、アサド大統領の退陣と、イスラム過激派諸派を除いた、穏健派による新政権樹立以外にないと思う。そのための国際会議開催が重要だ。

  ――イスラム過激派の行動は全世界に混乱をもたらしている。イスラム教の本質からずれているとすれば、(スンニ派最高権威)アズハル大学などの穏健派指導者の使命と役割が大きいのではないかと思うが。

 確かに、欧米において過激主義者のテロなどによって、イスラム教そのものへの嫌悪感が拡大している。従って、アズハルは本当のイスラム教を宣(の)べ伝える使命がある。教育を通じてイスラム教の真の姿を周知徹底させる必要がある。最近、アズハルの指導者はアズハル内部で選出されることになった。今までは時の政権が指名していたので、どうしても政権寄りと見られ、思い切った改革や提言をすることができなかった。

 アズハルは、スンニ派をまとめるだけでなく、シーア派との対話もすべきだ。全ての宗派、セクトをまとめ、本当のイスラム教の在り方を示し、全イスラム教徒を教育する責任がある。

  ――ムスリム同胞団は、自分たちが民主主義勢力だと主張している。しかし実際は、イスラム法によるイスラム国家を目指している。

 ムスリム同胞団は、自分たちの物差しで民主主義を考えている。独善的考え方に固まっており、他人の意見を聞かない傾向がある。大部分の国民は今、彼らに政権を渡したことを悔いている。私は彼らが間もなくそのことに気付き、考えを変えることを希望している。

 暫定政権側も同胞団も共に同じトラックに戻り、新たなエジプトを建設していくべきだ。イスラム国家、宗教国家ではなく、市民国家を建設すべきだ。

(聞き手=カイロ・鈴木眞吉)