2023年度 精神疾患で休職 過去最多
問われる行政の本気度
2023年度に精神疾患を理由に休職した教員は沖縄県内公立小中高・特別支援学校などで268人で、過去最多だったことがこのほど分かった。これは県内全教員の1・69%に当たり、10年以上にわたって全国平均の2倍以上の状態が続いている。教員不足が深刻さを増す中、那覇市が推進するモデル事業に期待が集まっている。(沖縄支局・川瀬裕也)
那覇市がモデル事業推進
負担軽減、労働環境改善へ
沖縄県教育委員会の調べによると、23年度に県内で病気休職となった教員は410人で、そのうち268人がうつ病などの精神疾患によるものだった。22年度の229人よりも39人増加し、最多を更新した。
学校別では小学校教諭が最も多い125人で、中学校が66人、高校が52人、特別支援学校が25人となった。年代別では40代が最も多く95人、続いて50代が93人、30代が63人、20代が14人、60代が3人となっている。
全教員に占める精神疾患による休職者の割合は全国的にも増加傾向にあるが、23年度の沖縄(1・69%)は全国平均(0・77%)の2倍以上になっており、10年以上も全国ワーストを続けている。
このような実情は県内の教育現場に打撃を与えている。県教委によると、県内公立学校の教職員の未配置数は昨年6月時点で35人。これにより、県独自の少人数学級(小1・2年=1クラス30人、小3~中3=1クラス35人)の編成ができなかったという。
一方で、県内の教員不足のもう一つの原因として、少人数学級の導入と特別支援学級の増加率の高さなどが挙げられている。特に2016年以降、特別支援学級の生徒が1人でもいれば学級を設置できるようになったため、1000クラスが増加。これに伴い1000人の教員が必要となった。
これらの現状を受け、県教委は、退職した教員や、何らかの理由で現場から離れている元教員の再任用の促進や、教員採用試験の年齢上限の59歳への引き上げ、教員免許を保持しているが教職に就いていない、いわゆる「ペーパーティーチャー」を対象にしたセミナーの開催など、あの手この手の対策を講じてきた。
そのような中で、教員の負担軽減と労働環境の改善のため那覇市は23年5月、県教委と連携し、同市の古謝玄太副市長と山城良嗣教育長が共同座長を務める専門の検討チーム「教員負担軽減タスクフォース」を設置。文科省の事業を活用しながら、主に精神疾患で休む原因などの分析と、相談体制の拡充、サポート体制の充実などを県内モデル事業としてスタートさせた。
同チームは市内の小中学校に勤務する全教員を対象にアンケート調査を実施。教員をサポートする特別支援教育補助員や学習支援員が不足していること、保護者からの相談などに対応するための学校専属の弁護士(スクールロイヤー)の拡充などを求める声が多かったという。このほか、部活動の顧問、地域行事への参加や夜間の見回りなどの業務が過重な負担となっている点も改めて浮き彫りとなった。
古謝氏は昨年10月にオンラインで開かれた報告会で、これらの課題について「優先順位を付けて、より重要なものから、できることから順次対策を打っていく」としている。
文科省は精神疾患などによる教職員の休職を予防するため、「未然防止」「早期発見・対応」「復職支援・サポート」の三つのポイントに分けて対応するガイドラインを定めており、那覇市との事業には最大1200万円が交付される見込みだ。
古謝氏は、「学校の働き方改革と教員のメンタルヘルス対策は本来、教委の組織で担当するものだ」と前置きしつつ、「予算などは首長部局が握っている」として「教委任せにせず、副市長の私と教育長が連携して対策を取っていく」と語っている。
県教委の半嶺満教育長は昨年末、「休職者の割合が高いことは喫緊の課題だ」と強調した上で、「(那覇市の)モデル事業の成果と課題を各市町村と共有し、連携強化を図った上で、働き方改革とメンタルヘルス対策を一体的に推進して、教員が心身の健康を維持し、教育活動に専念できる環境の確保に努めていく」と述べた。
全国最悪となっている教員不足の課題を解決できるか、今後いっそう行政の本気度が問われそうだ。