Home防衛・沖縄首里城火災から5年 出火原因の立証にめど

首里城火災から5年 出火原因の立証にめど

県との裁判 原告共同代表・石岡裕氏

復元工事が進む首里城正殿=10月17日、沖縄県那覇市の首里城公園

2019年10月31日未明に発生した首里城火災からまもなく5年となる。出火原因の追究と責任の所在を巡る県との裁判で原告共同代表を務める石岡裕氏は、首里城の管理体制の在り方を再度疑問視し、争点となっている出火原因の立証に「一定のめどが立った」と明かした。
(沖縄支局・川瀬裕也)

指定管理者選定過程に疑念

約11時間にわたり燃え続けた首里城火災は正殿、北殿、南殿など7棟が全焼、2棟が一部焼失する大惨事に発展。それに伴い文化財約300点以上も焼失し、大きな損害を生んだ。

これに対し、「沖縄県が発災責任を負う指定管理者・沖縄美ら島財団に約2億円の損害賠償を請求しないのは違法」だとして、21年、石岡氏ら8人の沖縄県民が、管理責任の所在の明確化と、管理体制の一新などを求め玉城デニー知事を相手取り住民訴訟を提訴。同年11月に口頭弁論が始まったが、原告が求めた管理マニュアルの提出に被告側が応じていないことなどから、裁判は膠着(こうちゃく)状態が続いている。

そのような中で再建が進む現状について、石岡氏は不満を露わにしつつ、このほど「出火原因の立証に一定のめどが立った」と明らかにした。裁判の争点となる内容のため詳細については伏せつつも、「今後、責任者がはっきりしてくるだろう」と自信をのぞかせた。

インタビューに応じる石岡裕氏=10月17日、沖縄県那覇市

石岡氏は、那覇地裁で開かれた第1回口頭弁論から、那覇市消防局の調査報告書では、火災原因はほぼ特定されていると主張していた。しかし、火災による損傷が激しく、現場で物証になり得る着火物なども燃えてしまっていたことから、原因の断定は困難とされてきた。原告側がこれを立証できれば、今後、裁判が大きく進展する可能性がある。

また石岡氏は、首里城地区の管理指定期間の更新に伴い、県が22年に実施した指定管理者の公募について、同年10月の県議会土木委員会で追及があったことにも触れ、県による指定管理者の選定過程にも疑念が生じていると語る。

同土木委員会で仲里全孝県議(自民)は、指定管理者制度に関する運用方針で定められる、「新聞広告、ラジオ、テレビなどを活用し広く周知すること」を県が怠り、ホームページ上でのみ公募していた点を問題視。結果的に沖縄美ら島財団1社のみの応募となったことを受け、「これ、競争が働いていますか」と疑問を投げ掛けた。

この件について、石岡氏は、「応募が1社だけだったのも解せないが、そもそも火災を起こした管理者に再度管理を任せるのはおかしい」と語気を強める。今後、「責任追及の世論をさらに大きく形成していきたい」と意気込みを語った。

22年に始まった首里城正殿の復元工事は現在、瓦の取り付けや塗装の工事が進んでいる。県は26年の工事完了を目指している。

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